HUYU 「冬の皺~中城ふみ子のこと」SIWA 松井多絵子
北海道・石狩湾の冬。うすい灰色のような海と雪の海岸線のひろがるグラビア。「短歌研究2月」の歌枕は中城ふみ子。
★ 冬の皺よせゐる海よ今少し生きて己れの無惨を見むか (乳房喪失)より
かつて、列車のなかから波頭を見つめた中城ふみ子の歌。三十一歳で、四人の子を残して世を去らなければならなかった中城ふみ子の無惨な死。<冬の皺よせゐる>の原型は<灰色の皺よする海>であったらしいと田中綾は書いている。たしかに雪をのみこむ冬の海は<灰色の皺>をいくたびも見せて揺れる、のだと。
この二月号には、松平盟子の「中城ふみ子という分岐点」が16ページに及ぶ。「中城ふみ子賞贈呈式記念講演」の再録である。私に話しかけられるのを、聞いているような読み物だ。はじめて知ることが多い。二月はふみ子がかたわらにいる月である。
❤❤ 「冬の海」❤❤ 松井多絵子
いま海を見たいとおもう春を待つ二月の空は底しれぬ海
ふたりより独りで見たい冬の海、握りしめたい春を待つ砂
波が砂を傷つけている砂が波を傷つけている渚を歩く
どこまでもどこまでも海どこまでもどこまでも空がつづいていたり
目つむれば波になりゆく心地して瞼をひらき沖をながめる
冬海の皺をうたいし女あり皺のなきまま夭折したり
歌集『厚着の王さま』より六首抄出
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