・・・ あるきだす飯田彩乃 ・・・
小雨は止み居間の窓に淡いひかりが広がっている。22日☀夕刊・あるきだす言葉たち
の 「ひかりの中で」の飯田彩乃のひかりに私も包まれてみたい。連作8首より3首を。
☀ 差し伸べる腕のかたちに曲げられておのづと暮れるマネキンの腕
ブティックで商品の服を着せられているマネキンは直立不動ではない。体を少しくねらせたり片足を曲げたりポーズをした姿に組み立てられるらしい。腕を前に差し伸べているマネキンは春を、春のひかりを求めているのだ。作者の春への憧れが伝わってくる。
☀ 足首のまはりに光まとはせて波打ちぎはに囚はれている
波が砕け白いしぶきが光を反射する。真昼の波打ち際の光はするどく輝く。作者は素足なのだろう。波のしぶきのなかの足。結句の「囚はれている」が利いている。
☀ 輝きは尖って痛いものだから触れることすらできないのだから
うつくしく輝くものは尖っている、だから触れられない。触れないように避けてしまう。そんな自分が歯がゆい。「できないのだから」の言いさしのこの1首は私を離さない。
ツイッターでもおなじみの飯田彩乃は1984年横浜生まれ。2016年、「微笑みに似る」30首で第27回歌壇賞受賞。3年半前から未来短歌会に所属。2015年度の年間未来賞を受賞。師事している黒瀬珂瀾氏が第14回前川佐美雄賞に決定した。飯田彩乃はいま光のなかにいる。鋭い光をやわらかく包みながら詩情ゆたかな歌を詠み続けるだろう。
3月24日 松井多絵子
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