えくぼ

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うっすらと哀しい

2015-08-06 09:15:27 | 歌う

            ・・・ うっすらと哀しい ・・・

 8月4日の 折々のことば は幸田文のことば。身に浸みる言の葉である。

~ うっすらと哀しいのがやりきれないんだ。ひどいかなしさなんかまだいいや。少しかなしいのがいつも浸みついちゃってるんだよ。 幸田文 ~
  

 わたしの場合だが 「うっすらと哀しい」 ときこそ詠める、ひどく哀しいときは詠めない。辛いときに詠めば傷の痛みがさらに激しくなりそうで、詠む気になれない。幸田文(1904~1990)は明治時代の文豪・幸田露伴の娘である。父を看取ったのちに40代で文壇にデビューした。「黒い裾」 読売文学賞、「流れる」 新潮文学賞。 

               うっすらと哀しい五首    松井多絵子 

      見送りに行きて見送られておりぬ動く歩道に運ばれながら

      目標に遠く離れた位置にいて何を捨てればいいのか風よ

      朝かげの漲るバスのなかに立ち夜の顔しているかもしれぬ

      ひとりには広すぎるベンチのかたわらに笑顔の私おすわりなさい

      しろたえのケミカルレースのカーテンを隔てて風の泣きごえを聞く

 

    はるかなる幸田文さま  いつも哀しいのが私に浸みついちゃってます。

                        8月6日   松井多絵子   


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