✿「両手に賞を、岩城けい」✿
✿まず賞を、そして急いで実力を、ふかく礼して花束を抱く 松井多絵子
岩城けい様 このたびは「大江健三郎賞」おめでとうございます。4月8日の朝日朝刊・ひと を見て「あら、まあ」でした。昨年10月16日のブログ「太宰治賞」に書いたのはアナタのことでした。あの★「さよなら、オレンジ」が大江健三郎賞も。ダブル受賞とはスゴイですね。しかもアナタはまだ43歳、私たちの仲間で50何歳かで新人賞を受賞した方が「遅すぎた」と。折角の賞が勲章で、原稿依頼は少ないと。「賞」はパスポート。アナタはこれから文壇を自在に泳ぎ回れますよ。大阪生まれの方は逞しいですね。大学在学中にオーストラリアに留学。卒業後、旅費を稼いで再留学、メルボルンの企業に就職、現地で日本人と結婚、子供は二人。あなたは現代の女性が欲しがっているものをみな手に入れて、更にビッグな賞を二つも受賞。
小説を書いたきっかけは異国にいる緊張感と孤独感だったそうですね。小さな島の日本人が広大なオーストラリアで暮らす、アフリカ系難民と日本の2人の女性が懸命に生きる姿を並行して描いた小説だそうですね。異国でのくらしは日本文学への感性を高めたのでしょうか。短歌でも異国からの投稿歌にわたしは度々感動しました。
作家の大江健三郎が1人で選考する第8回大江健三郎賞は講談社主催。4月7日に、『さよなら、オレンジ』が受賞作になりました。これが最後の「大江健三郎賞」だそうです。
岩城けい様 アナタは実力だけでなく運もいい方。運も実力なのですね。太宰治と大江健三郎はかなり異なるタイプの男性。その二人にアナタが愛されているような両手に輝く賞。いま居間の真昼の窓にひろがる新緑がまぶしいです。
ここに原稿用紙があるから書いている杖のごとペンを動かしながら
4月9日 晴れ 松井多絵子