「いつまでも男と女」
✿わたくしを女とおもわぬ青年とひとつベンチに、池の汀の 松井多絵子
『失楽園』や『愛の流刑地』などの小説でおなじみの渡辺淳一さんが又あたらしい本を。老い方レッスン最新刊という★『いつまでも男と女』 老活術実践編という広告が日曜の新聞に。
渡辺淳一さんはすでに80歳か。札幌医科大学部卒業後母校の整形外科講師をつとめるかたわら小説を執筆。直木賞を受賞している。
「上り坂も、下り坂も人生のすべてを生きるために」という広告文は目に痛い。私は今まさに下り坂、坂を上るのはカロリーを使うが下るのはきわめた楽だ。瞬く間に下りてしまう。しかし人生の下り坂は楽ではない。やりたいこと、行きたい処、読みたい本、食べたいものがわんさとある。脚は2本しかない。同じ時間にあちこち行けない。読みたい本も一度に読めず、食べたいものも一度に食べられない。私はもう女でいることに疲れてしまった。年よりも若く見せるには並々ならぬ努力をしなければならないのだ。
「自然に衰える体と付きあい、今こそぎらぎらして生きよう。最後まで男と女でいるために」。と渡辺淳一さんは老人の私たちにエールを送ってくださいますがご自身へのエールではないかしら。「高齢男性こそ軽薄に」なんて。あゝ私は軽薄な俺になりたいなあ。
✿わたくしが今夜は俺になりたくてビール大瓶さらに一本
3月2日 松井多絵子