「春が来ている」
先週の日曜の夜は、さいたま大宮で山崎聡子さんの歌集『手のひらの花火』受賞祝賀会だった。中華料理店で30代の新鋭歌人に囲まれ、昭和の語り部・松井多絵子はよく喋りよく飲みよく食べた。いい気分の2時間。東京駅から新幹線で名古屋までの時間か。名古屋といえば「おかげ横町」、味噌カツ、今日のお昼はきしめんに刻み葱、ソース、粉チーズ。おいしいですよ。
✿✿ 春が来ている ✿✿ 松井多絵子
細き首を傾けながらわれを見る素描の少女も風邪をひきそう
ようやくに風邪の治りて外(と)に出ればわが葉牡丹の息絶えており
初恋のひとだったのだ「桃太郎」彼こそ誰より頼れる男
古い手帳をネガフィルムを捨てるなら空っ風ふく今日こそよけれ
まだ雪を脱がない山を引き寄せて引き離してゆく高速バスは
売るひとと買うわれの手に陽がさして春が来ている「おかげ横丁」
歌集『えくぼ』より抄出