軽井沢からの通信ときどき3D

移住して10年目に入りました、ここでの生活と自然を写真と動画で発信しています

新型コロナウィルス(5/5)

2020-04-14 00:00:00 | 新型コロナウィルス
 今年に入り、雲場池に朝7時半前後に散歩に出かけるようにしている。初めのうちは、日が出たばかりでまだ空気も冷たく、喉を守るためにマスクをして出かけていた。


朝の雲場池(2020.1.11 撮影、iso200,1/120s,f4)

 その後もほぼ毎日散歩は継続していて、4月に入ってからも同じような時刻に出かけているが、太陽はもうすっかり高く昇り、明るさも増してきた。同じ場所で撮影した写真の露光条件を見てもその変化が分かる。そして、散歩にマスクが不要になってからも久しい。


朝の雲場池(2020.4.8 撮影、iso100,1/220s,f5)

 この間、朝の雲場池は相変わらずの静寂で、たまに池周辺をジョギングする人がいたり、犬の散歩をする人に出会うくらいで、池にいる水鳥の顔ぶれは少し変化したものの平和そのものである。

 しかし、この3か月ほどで、日本と世界の様子は一変してしまった。朝不要となったマスクを、今度は、昼間買い物で近くのスーパーマーケットに出かける時に付けなければならなくなってしまった。

 このブログでは朝の雲場池の様子、池に集まる水鳥や周辺で見かける野鳥の姿を首都圏と関西方面在住の友人・知人に報告するつもりでいたのであるが、突然の新型コロナウィルスの出現に、これにまったく触れずにいることができなくなり、公開の曜日をずらして、両方の話題を並行して書くようになってしまった。

 その新型コロナウィルス、4月7日夕刻に安倍首相からいよいよ日本でも緊急事態宣言が発令されるに至り、事態は一段と緊張の度合いを増した。

 これまで専門家会議はオーバーシュート、すなわち累積感染者数が2-3日で2倍になる状態が繰り返される状態であることが緊急事態宣言発令の基準となるとしていた。しかし、今回はオーバーシュートの恐れがあるという段階での前倒しの発令となった。医療崩壊を防ぐためには早めの措置が必要と判断したものである。

 日々更新されている各都道府県別の感染者数累計を見ると、緊急事態宣言発令直前の4月6日時点で感染者数が100名を超える都道府県数は全国で10あって、今回の対象となった7都府県はすべてこの中に含まれているが、その内感染者数が急増した福岡県を除いて、2-3日で2倍に達しているところはなかった。そこで、期間を拡大して1週間で見ると、次のようである。

県別の累計感染者数の増加状況(筆者作成)

 3月31日から4月6日までの1週間に期間を広げて、ようやく2倍を超えるのが、埼玉県と東京都であり、ほぼそれに近い水準に達しているのが大阪府、京都府、神奈川県ということになる。千葉県と兵庫県はそれぞれ1.61倍、1.45倍と低いが、東京、大阪と同じ生活圏ということで今回指定対象に選ばれている。

 一方愛知県は、千葉県に次いで感染者数が多いが、倍増のスピードが非常にゆったりしているし、感染経路がわからない人の割合が比較的低いこともあり、今回は規制しなくてもいいと判断したとされる。同様の判断を北海道、京都府でもしているという。

 尚、全国平均では同じ期間に1.89倍と神奈川県と同等の増加率を示していて、全体としては感染者数が少ない県が多いものの、確実に増加していることを示している。従って、今回の緊急事態宣言の対象にはならなかったとしても、決して油断できない水準にあるとみてよいだろう。

 こうした判断は、「基本的対処方針等諮問委員会」の答申を受けて行われたが、この諮問委員会のメンバーは次のとおりであり、これまで科学的な立場から政府に進言してきた「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」のメンバーが全員含まれている。


「基本的対処方針等諮問委員会」と「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」のメンバー

 安倍首相はこの緊急事態宣言の中で、対象となる地域に5月6日までの1か月間の「外出自粛を要請」すると同時に、今回の措置が「海外のような都市封鎖(ロックダウン)ではない」と強調した。また、新型コロナウィルスに関して、3つの具体的な数字を挙げて説明を行った。次のようである。

 「事態は切迫している。足もとでは5日で2倍になるペースで感染者が増加を続けており、このペースで感染拡大が続けば、2週間後には1万人、1か月後には8万人を超える。
 しかし、専門家の試算では、人と人との接触機会を最低7割、極力8割削減できれば、2週間後には感染者の増加をピークアウトさせ、減少に転じさせることができる。・・・」

 前段の1万人、8万人という数字は、現在の感染者数の増加傾向を見ると予想できるものである。後段の8割削減という目標の数字は、厚生労働省のクラスター(感染集団)対策班の一員でもある北海道大の西浦博教授(理論疫学)によるもので、図が翌日の新聞紙上に紹介されている。

 この考え方は、北海道で緊急事態宣言を発令した際に、国に先行して取り入れられたもので、以前尾身副座長が山中教授との対談でも紹介していて、クラスターモデルを用いたものと考えられる。ただ、今回この計算の前提となった条件などの詳細はまだ判っていない。
 
 この7割から8割の接触減が実現可能なものかどうかという点について、早くも多くの議論が巻き起こっている。

 自民党の二階俊博幹事長は、記者の質問に、「・・・できるワケない」と答えたとニュースで報じられた。

 ただ、この発言は、記者が行った質問に答えてのもので、質問と見比べて改めて見てみると、やや違った趣旨になるのかもしれない。

 4月8日のNHKニュース番組に登場した諮問委トップの尾身氏は、このことについて、接触8割減には・・・バーなどの3密・夜の街での接触については10割減、外出は8割減、仕事では4割減を見込んでいて、可能なものとの見解を示した。

 一方、8割の接触削減では不十分で、2週間後に新規感染者を生まないためには、東京では98%行動抑制が必要とするシミュレーション結果を、横浜市立大学の佐藤彰洋教授が発表していて、異なる見解のように見えるが、ただ、シミュレーションの前提となる条件が異なっていることに注意する必要がある。

 今回の緊急事態宣言では、こうした目標となる数値を達成するために、外出自粛を要請するものの、「社会機能維持のための事業の継続」も呼びかけており、「公共交通機関など、必要な経済社会サービスは可能な限り維持しながら、感染拡大を防止していくという対応に変わりはない」と安倍首相は強調した。

 このことは、中国武漢市をはじめ、イタリア、フランス、スペイン、そしてアメリカで行われているような交通遮断や都市封鎖は行わない、「日本型の戦い」を目指すことを意味していて、こうした取り組みはかねて専門家会議が目指していたものである。

 安倍首相の緊急事態宣言発令後の記者会見の席上、イタリア人記者から海外とのこうした取り組みの違いについて、「・・・世界はほとんどロックダウンにしているのですけれども、日本だけ今まで天国が見えると思いますよね。今まで御自分で対策を投じた中で、一か八かの賭けが見られますね。成功だったら、もちろん国民だけではなくて世界から絶賛だと思いますけれども、失敗だったらどういうふうに責任を取りますか。・・・」との質問が出された。

 これに対して、安倍首相は、
 「・・・これは、例えば最悪の事態になった場合、私たちが責任を取ればいいというものではありません。まず、私たちが採っている対策は他の国と違うではないかということでありますが、それは他の国々と、例えば、御国(イタリア)と比べても感染者の方の数も死者の数も桁が違う状況であります。・・・

 海外の例を見れば、ヨーロッパの国々と比べれば、はるかに感染者の増加のスピードは遅いわけでありますし、そして同時に、我々は他の国とは違ってクラスター対策というのをやっています。これは大変なんですが、クラスター班というのは現地に行って朝から晩までずっと、感染者が出れば、この人が接触した人をずっと追っていきます。その皆さんにはPCR検査をやっていただいて、クラスターを潰していくという形でやっている。これは日本の一つの特徴なのだろうと思いますし、これを評価もしていただいているのだろうと思います。・・・」として、海外との違いを説明した。

 すでに海外では起きていることであるが、今後若し医療崩壊が起きた場合には、「トリアージ」と呼ばれる患者の選別が避けられなくなる。ヨーロッパでは、人工呼吸器やECMOと呼ばれる人工心肺装置などが間に合わず、必要な治療を受けることができずに亡くなるといった状況も発生しているという。

 今、政策面では、国家レベルでこのトリアージと同じことが起きているように見える。すなわち、「医療崩壊」と「経済崩壊」のどちらへの対策を優先するかという選択に迫られている。

 先ほどの海外の記者の質問は、海外では「医療崩壊」を防ぐことに重点を置いている国が多い中で、今回の日本の対応は、二兎を追う形になり、虻蜂取らずになるのではとの指摘である。

 どちらも、人の命がかかっている。「医療崩壊」が起きると医学的な治療を受けることができずに命を落とす人が出る一方で、「経済崩壊」が起きると、日々の収入の道を断たれたり、倒産するなどして自殺に追い込まれる人が出ると懸念される。

 尾身氏は、今回の日本型の対応策に自信を示しているようであり、NHKの番組で、トータルで8割の削減ができれば、理論的にも間違いなく感染者数は下がるとの見解を繰り返した。そして、オーバーシュートを回避できる戦いの急所は、政府、地方自治体、ジャーナリズムそして国民のみんなの「覚悟」であるとして、協力を呼び掛けた。

 4月7日、緊急事態宣言後NHKのTV番組に出演していた安倍首相は、最後に、「ずばり、ウィルスはいつ収束すると期待しているか?」と問われて、「収束には、特効薬やワクチンが必要であり、今特効薬ではアビガンなどが出てきている。ワクチンも今年暮れから来年初めにかけて接種が可能になるので、そうなると収束が見えてくる。」と答えている。
 
 同時に、「日本だけが収束してもだめで、世界の収束が必要。」とし、国際的な協調が必要であることも指摘した。

 尾身会長と安倍首相の発言とを合わせ聞くと、当面するオーバーシュートは国民の協力が得られれば、回避できる可能性があるとしても、日本と世界はまだ今回の新型コロナウィルス感染の入り口にいることが改めて判ってくる。こうした状況と戦うためには、「敵」すなわち新型コロナウィルスのことを正しく理解し、今後も長期的な戦いに臨む「覚悟」が必要だということを受け止めて行動していかなければならないようだ。

 緊急事態宣言が発令された翌日の8日、読売新聞の1面に掲載された次の記事が、これまでの状況をよくあらわしていると思えるので引用する。

 新型コロナウィルスについては今後1か月間の推移を見守っていくことにして、5回にわたり続けて来たこの臨時のブログを一旦終えることにする。


2020年4月8日、読売新聞1面の記事から

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 山野で見た鳥(4)小さな三... | トップ | 雲場池の水鳥(1)マガモ »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

新型コロナウィルス」カテゴリの最新記事