ホームレス・黒猫のタンコ ⑬

大型台風２１号が近畿を直撃、これまで体験したことのない、豪風と叩きつけるような雨が吹きつける。同じアパートのＨさん宅では、風で換気扇が外れ部屋の中に落ちて、空いた穴から風が吹き込んでいるので何とかして欲しいと頼まれた。とりあえずＨさん宅に駆けつける。外れた換気扇がガスコンロの上に落ちている。外れた換気扇は直せそうにないが穴を塞がなければならない。部屋に戻り、カレンダーを貼っていたボードを外し、工具と一緒にＨさんの部屋に行った。緊急処置として空いた穴にボードを釘で打ち付けて仮修理とした。
今日の朝は台風よりも悩んでいたことがあった。子猫たちをどうするか、とりあえず朝食を多めに与えて考えた。今の住処の樹の下では台風の雨風は凌げられないだろう。どうすれば良いのだろうと考えたが案は出てこない。一昔前の純愛物語ではないが、毎日顔を合わせながら手を触れたこともない。猫好きの人には想像もできないが、２ヶ月が過ぎているのに、抱き上げたこともなければ、頭を撫でたこともない。もし、部屋の軒下に逃げてきたらどうするか、緊急処置として部屋に避難させなければならないだろう。
抱き上げられないのにどうやって部屋に招き入れるか悩んだ、食事を餌に部屋に誘導するか、だがタンコが邪魔をするだろうと予測される。色々と考えたが解答はでない。風が強くなり始めた昼前に猫たちの住処の樹の下を見るが猫たちの姿が見えない。野性の本能で何処かに非難したようだ。それはそれで心配なのだがどうしようもない。本日の朝、猫たちはどうなっているのか、心配しながら掃き出し窓を開ける。私の姿を見ると子猫たちがいつもよりそわそわと動き回っていた。もちろん私を睨みつけるタンコの姿もあった。


「お母さん、また怒っているの！」









２０１８年９月５日　８時７分に撮った最新版