若杉冽というキャリア官僚が書いたリアル告発ノベルの「原発ホワイトアウト」に続く第二弾。前回は新崎県の原発付近の鉄塔がテロによって倒壊し、新崎原発が停電による冷却不能に陥って臨界に達するところまで描かれていたが、今回はその続きの顛末が描かれている。タイトルは前作の「原発ホワイトアウト」と対照的な色彩感を持った「東京ブラックアウト」となっている。タイトルはとても意味深な表現であり、読んでいる途中から「この物語は、物語の中の日本は、いったいどこに行こうとしているのだろうか」と思い末恐ろしくなる。
登場人物や団体名がその特徴や名称を限りなく実在の人物や団体名に近づける体裁で書かれていることもこの小説のミソである。発送電分離に関する法整備やその法解釈に始まり、電力モンスターシステムという多額のマネーに群がる電力会社と政治家や官僚たち、避難計画策定における著しい欠陥、それに、目に見えぬ猛毒に晒される市井に人たちの恐怖とその終焉、全てが虚構なのか、そう遠くない未来にやってくる現実世界の姿なのか、物語は絶望的な世界観をもって幕を下ろすのだが、もしそれらが虚構ではなく「そう遠くない未来にやってくる現実世界の姿」であるとすれば、たとえそれが絶望的な世界であったとしても人類が生き続けていく以上は、幕が下りることはない。それこそがこの作者が警鐘する一つの真実なのではないかと私は思う。
東京ブラックアウト
原発ホワイトアウト