2-4.「鏡」と「羊をめぐる冒険」との関連
「鏡」と「納屋を焼く」の直前に書かれたのが「羊をめぐる冒険」である。その関連にも簡単に触れておく。
第八章「羊をめぐる冒険Ⅲ」の「9鏡に映るもの・映らないもの」に次のような関連する記述がある。列挙して引用する。
「夕方になって鼠の部屋に新しい本を取りに行こうとして、階段の上りぐちにある大きな姿見がひどく汚れていることに気づき、雑巾とガラス磨きスプレイで磨いた。しかしどれだけ磨いても汚れは落ちなかった。(中略)
磨き終わったあとにはくもりひとつ残らなかった。(中略)ただ鏡の中の像は必要以上にくっきりとしていた。そこには鏡に映った像特有の平板さが欠けていた。それは僕が鏡に映った像を眺めているというよりは、まるで僕が鏡に映った像で、像としての平板な僕が本物の僕を眺めているように見えた」
「僕は台所に新しい缶ビールを取りに行った。階段の前を通る時に鏡が見えた。もう一人の僕もやはり新しいビールを取りに行くところだった。我々は顔を見合わせてため息をついた。我々は違う世界に住んで、同じようなことを考えている。(中略)
僕は冷蔵庫から新しいローエンブロウの青い缶を取り出し、それを手に持ったまま帰りにもう一度鏡の中の居間を眺め、それから本物の居間を眺めた。羊男はソファーに座ってあいかわらずぼんやりと雪を眺めていた。
僕は鏡の中の羊男の姿を確かめてみた。しかし羊男の姿は鏡の中にはなかった。」
まどろっこしい解説は必要あるまい。あきらかに「鏡」と同じ構造がそこにはある。
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