とにかく書いておかないと

すぐに忘れてしまうことを、書き残しておきます。

ナショナルシアターライブ『リーマン・トリロジー』を見ました。

2020-03-26 17:44:00 | 映画
 イギリスの舞台を映画館で上映するナショナルシアターライブ。演劇好きにとってはとてもいい企画です。問題は上映する映画館が都会に限られるということと、その期間が短いということです。私のような地方在住者はほぼ見ることができません。『リーマン・トリロジー』は大きな話題となった作品で、そのおかげで、シネリーブル池袋で比較的長い期間再上映しています。わたしも都合が合い見ることができました。評判通りすごい作品でした。

 「リーマンショック」というのは「リーマンブラザース社」の破綻による経済危機です。この映画はその「リーマンブラザース社」の創立から破綻までの150年ぐらいを描いています。ドイツからアメリカに渡ったリーマン3兄弟がどうやって会社を創立したかからはじまり、その子孫がどのように会社を大きくしたか、そして世界大恐慌をどう乗り切ったか、そして破綻のときまでを描きます。

 この大河物語をたった3人の役者で描きます。劇の構成と役者の演技の見事さによって時間があっという間に過ぎていきます。

 この演劇によって経済の近代史が描かれます。次のようなセリフがあります。「昔は必要だからものを買った。しかし今は、ものを買いたいと思うからものを買うようになった。」つまり、消費意欲を無理焼き喚起され、人々は消費するように変化したということです。

 一昔前までは私たちは生活に必要なものが主な消費の対象でした。洗濯機、冷蔵庫、掃除機、電気釜、電子レンジ、自動車など、今となってはないと困るものです。そういうものを買い求めることが消費だったのです。ところが今は高いお金をだしてまで買わなければならないものはほとんどなくなってしまいました。今は生活に必要なものは食料品ぐらいです。それ以外のほとんどのものは家にすでにあり、しかも性能が向上し壊れにくい。ですから生活だけならばあまりお金を使う必要はありません。それでは商売はなりたちません。経済が停滞します。企業はなんとかお金を使わせなければなりません。そこで企業は消費をあおるようなコマーシャルによって消費を創造します。経済は実態と離れはじめます。現代の経済は本質的にバブルになってしまったのです。

 今はほとんどの人間にとって社会の姿が実感としてとらえきれなくなっています。私たちの消費活動は誰か知らない人たちに操られているように感じられます。目に見えない敵は常にどこかに潜んでいるのです。現代を実感できる作品でした。

 演出はサム・メンデス。『1917』の監督です。才能の豊かさを示しています。

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