新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

2023年2月の新宿区の人口

2023-03-26 07:47:41 | コラム
23年2月の新宿区の人口は345,718人となり、対前月比△0.15%だった:

今年2月の新宿区の人口は1月に続いて減少し345,718人で、その比率は△0.15%となっていた。先月の調査では新宿区は「都内の住みたいところ」の5番目となっていたのは、何だったのかという気分だ。区役所の発表では外国人も297人の減少で40,037人となり、辛うじて4万人台に止まっていた。外国人が区全体の人口に占める比率は11.6%であり、昨年の12月と今年の1月と同じ比率だった。日本人も△207人の減少で305,6818人とマイナス成長を続けていた。

だが、一度でも大久保通りの山手線の外側や、イスラム横町にでも来てみて頂ければ、11.6%とは我々日本人の比率のことかと錯覚されるだろう。実際に、この通りにあるコンビニの中には、週刊誌等の雑誌はおろか新聞すら置いていない店もあるのだ。つい先日、我が家の近所の住宅街に残っていた唯一の蕎麦屋が廃業して、目下アパートの建築工事が進行中だ。事ほど左様に日本人を相手にする商売が成り立ちにくくなっているのだ。

一昨日の午後2時過ぎに新大久保の駅の改札口を通って外に出たが、あいにくの小雨模様にも拘わらず、押し寄せ押し返す大群の中には観光客としか見えない白人がかなり多くいたのが印象的だった。ここ百人町/大久保界隈にも「インバウンド」の波が押し寄せてきたのだろう。だが、彼らは何が見たくてここまでやってくるのだろうか。まさかKorea townに婦女子向けにアレンジされた韓国風料理を味わいにくるわけでもあるまいと思うが、丼なものだろうか。

何処からやってくるのか知らないイスラム教徒のためのハラルフードを売る店も、「またここにも出てきたか」と感じさせるように新規に開店しているし、大いに繁盛しているように見える。イスラム横町のアラビア料理の店には、あの焼き鳥のように見える串焼きを食べに若き同胞たちもちらほら見えるようになってきた。

兎に角、この新大久保駅前から我が家との間を結ぶ文化通りは、望ましいとは思えない低次元の国際化が進んでしまった。ご用とお急ぎでない方は是非一度山手線を利用しておいで願いたいものだと思うのだ。外国資本に企業や不動産が買収されていくような好ましくない傾向を嘆くことは必要だろうが、この地区に見られるような発展途上国からの入国を許すと、上記のような低次元の国際化が小規模に進んでしまうこと痛感させられるだろう。「1:29:300」の法則を忘れてはなるまい。

G7やG20もウクライナ支援も国家としては大事だろうが、政治が小事にも怠りなく目を配っていてもらいたいのだ。それを怠ると、近所に銀行の支店も、本屋も、飲み屋も、蕎麦屋も、惣菜屋も、魚屋もなくなってしまうような住宅地が、アッという間にできてしまうのである。狭い路地にあるイスラム横町には、道交法な何処吹く風とばかりに無視する青いナンバーをつけた車の路上駐車が絶えないことになるのだ。


3月25日 その2 「遅ればせながらWBC野球を振り返って」の訂正版です

2023-03-25 09:36:59 | コラム
皆が一丸となっての優勝だった:

先ず、今週は滞在先でPCがない場所にいたので、準決勝戦からは観ていただけだった事をお断りしておこう。

皆で勝った:
今回の優勝はこれまでに対戦してきたどのアメリカ代表とも違う個性豊かなMLBのスター選手が多数並んでいた凄いティームだったので、そこと真っ向から勝負して勝ったのだから「WBC史上最高の優勝」と評価して良いと思う。一致団結したティームの勝利だった。

監督、コーチ、選手、通訳、トレーナー、マネージャー等々全員を賞賛すべきだと思っている。確かに9回に大谷対トラウトが2死で3-2のカウントで対峙するとは将に漫画にでも出てきそうな展開だった。

「優勝するのだと思っていた」:
栗山英樹監督も大谷翔平君も「勝つ」と言い切っていたので、2試合とも「勝ってくれるものだ」と信じて観戦していた。あの素晴らしい優勝で誰がMVPと言うことはないと言えるとは思ったが、やはりあの最後にトラウトから三振を取った凄いとしかいいようがないスライダーを投げる前の、あの集中しきった表情を見せた瞬間だけから判断しても、大谷翔平以外はあり得ないと思わせられた。あれだけ「勝つこと」に集中できたということだけを捉えても、大谷翔平は素晴らしかったと思う。

吉田正尚論:
あのアメリカはフロリダでのメキシコ相手の試合は言わば「アウエイ」状態だったので、海外での経験がない佐々木朗希が何処まで投げてくれるか、実は一寸不安だった。彼が3点を取られたときには、これをどやって取返すのかなと思ってみていれば、あの不振の村上に代わって4番に上がっていた吉田正尚の「切れないで飛んでくれ」と願っていたホームランで追いついてくれた。

吉田正尚の良さはあの9回裏の逆転のお膳立てをした四球を選らんことにも現れていたと観ている。村上宗隆自身が「バントもあるか」と振り返っていた局面だったが、「閃き」では「打たせるしかないだろう」と来ていた。後になって栗山監督から「任せた」と言われたと言うが、冷静なる評論家としては何とかなる意外に勝つ方法がない」と信じていたので、むしろ気楽に観ていられた。

栗山采配の妙:
あの場での最大の見所は栗山監督の名判断であろう。4番打者の吉田の代走に周東を出したことだ。「延長戦は考えていないんだな」と叫んでいた。周東の脚の速さは大変なもので、大谷を追い越しはしないかと気になったほどだった。3塁のコーチャーだった白井は「回すかどうか判断に迷った」というようなことを回顧して見せたが、村上の打球が飛んだ瞬間に「ひっくり返せた」と信じていた。この作戦だけから考えても、我が方はメキシコよりも上だったと断言できる。

決勝戦だが、何の理論的な根拠もなく「勝つのだろう」と思い込んでいた。今永昇太を先発に使ったのは合理的な判断だと読んだ。今永は良く投げていたと思うが、当たっているターナーに投げたときは真ん中に行ってしまったと見た。失投とか何とか言う前にMLBの一流のバッターには、あのような投球をしてしまえばあのような結果になるという学習になっただろう。思うに、MLBのスカウトたちの今永の評価は高くなったのではないのか。

村上宗隆:
その直ぐ後にホームランで同点に持って行った村上宗隆は、好調だった頃の自信に満ちたスゥイングだったし、振り切った後で打球の行方を見ていた姿勢は紛れもない三冠王の彼そのものだった。あのメキシコ戦での逆転の一打と言い、あのホームランと言い、吉田正尚に並ぶ準MVPの一人に挙げて(「ノミネートして」も)おいて良いと思った。

岡本和真:
岡本和真の働きぶりも賞賛に値する。「ジャイアンツ嫌い」としては彼の活躍には少しだけ思い半ばするが、「ここぞ」という場面で2回もホームランを打ってくれたのでは「良くやってくれた。最高だ」と賞賛せねばなるまい。準MVPにノミネートしておこう。同じジャイアンツから来ていた戸郷翔征も素晴らしかった。彼も菅野と同様に「残念ながら良い投手だ」と評価していたので、トラウトを三振に切って取ったフォークボールなどはMLBで通用すると立証して見せていた。

中継ぎ投手陣:
あの決勝戦ではアメリカ側も7人だったかの投手を繰り出して見せていたが、我が方が送り込んだ「若手」の部類に入る投手たちが安打こそ数多く許していたが、抑えきって見せたのは立派だった。特に高橋宏斗はリーグ戦で見たときには「中日はこれほどの投手を抱えてビリとは」と感じさせてくれた逸材だと評価していた。一部に言われている「中日は今季には優勝」とまでは行くまいが、彼の成長には期待が持てる。間もなく同姓のヤクルト高橋奎二を凌ぐ存在になるだろう。

 
他のあの決勝戦に出てきた伊藤大海、翁田大勢も偉いと思うが、8回に出てきたダルビッシュ有のこの代表ティームへの貢献はどれだけ褒めても褒めきれないと思う。ホームランを打たれて1点差にはされたが、あの場面で表情を変えずに落ち着いて投げきった姿勢からは、流石は10年を超えたMLBでの経験を積んだ投手だと痛感していた。

あらためて大谷翔平を:
大谷翔平の素晴らしさは今さらここに私が云々するまでもない。既に指摘してあったように彼は「MLBの中でも頭三つくらいは抜き出た別格の存在」なのである。変な言い方を敢えてすれば「MLBでの5年間で28歳のショーヘイは史上希な偉大なる選手の領域に一歩も二歩も踏み込んでいる」のだ。ここから先に何処まで成長するか期待が膨らむが、冷静ではあっても悲観論者の評論家は「(働き過ぎで)短命に終わらないで欲しい。後10年は輝き続けてくれ」と願っている。

野手たちの評価:
野手も振り返ってみよう。「凄い。偉い」と評価したいのが中村悠平である。それは、あの決勝戦で初めて大谷の160km超の速球とあのスライダーを受けたことに尽きる。後になってそう報じられていたので、「なるほど。ずっと甲斐が受けていたな」と気が付いた。あのトラウトへの最後のスライダーのシグナルを出すのは迷ったそうだが、あれだけ曲がって空振りを取れたのだから最高だろう。誰だったか「良く捕球してくれた」と賞賛していた意味がここにあった。

守備力から見れば三塁手は岡本和真の方が適任だと評価するが、村上宗隆の一塁守備は見たことがないのであれはあれで良かったのだが、栗山監督も難しい選択だったのではないかと疑っている。源田壮亮の守備力は認めてきているが、負傷したままで起用した選択は疑問の余地があると見ている。だが、結果オーライだった。中野拓夢はエラーが多い阪神の内野手の1人なので、止むを得なかった措置だと判断した。

 
外野に目を転じて見よう。近藤健介は攻守とも問題ないが、あの決勝戦でトラウトが2塁を狙って走ったときの下からの2塁への送球は良くなかった。あの場では慌てずに上から投げれば充分に間に合ったように見えた。彼は元はと言えば捕手だったので、そこまでの訓練ができていなかったのが残念に思えた。ヌートバー君はMLBでポジションが取れている選手だ。あれくらい貢献してくれて当然だったが、栗山監督がセンターでトップバッターに使い続けた采配も大いに評価すべきだろう。

結び:
こんなに賞賛を続けるのは滅多にないことだが、何処かにあった裏話を紹介して締めくくろう。栗山監督は名指揮者だったが、言われることには精神的な表現が多く「精神主義を嫌う現代人の選手たちに敬遠されるのでは」との懸念があったそうだ。だが、現実にはあの見事な一致団結しての優勝だった。しかし、何処かにもあった論調に「MLBの上を行く」というのは早計で」「トーナメントで1回勝っただけ」だし、大谷翔平君は「MLBの実力は格が上」と正直に語っていたではないか。

遅ればせながらWBCの野球を振り返って

2023-03-25 09:15:36 | コラム
皆が一丸となっての優勝だった:

先ず、今週は滞在先でPCがない場所にいたので、準決勝戦からは観ていただけだった事をお断りしておこう。

皆で勝った:
今回の優勝はこれまでに対戦してきたどのアメリカ代表とも違う個性豊かなMLBのスター選手が多数並んでいた凄いティームだったので、そこと真っ向から勝負して勝ったのだから「WBC史上最高の優勝」と評価して良いと思う。一致団結したティームの勝利だった。

監督、コーチ、選手、通訳、トレーナー、マネージャー等々全員を賞賛すべきだと思っている。確かに9回に大谷対トラウトが2死で3-2のカウントで対峙するとは将に漫画にでも出てきそうな展開だった。

「愁傷すると思っていた」
栗山英樹監督も大谷翔平君も「勝つ」と言い切っていたので、2試合とも「勝ってくれるものだ」と信じて観戦していた。あの素晴らしい優勝で誰がMVPと言うことはないと言えるとは思ったが、やはりあの最後にトラウトから三振を取った凄いとしかいいようがないスライダーを投げる前の、あの集中しきった表情を見せた瞬間だけから判断しても、大谷翔平以外はあり得ないと思わせられた。あれだけ「勝つこと」に集中できたということだけを捉えても、大谷翔平は素晴らしかったと思う。

吉田正尚論:
あのアメリカはフロリダでのメキシコ相手の試合は言わば「アウエイ」状態だったので、海外での経験がない佐々木朗希が何処まで投げてくれるか、実は一寸不安だった。彼が3点を取られたときには、これをどやって取返すのかなと思ってみていれば、あの不振の村上に代わって4番に上がっていた吉田正尚の「切れないで飛んでくれ」と願っていたホームランで追いついてくれた。

吉田正尚の良さはあの9回裏の逆転のお膳立てをした四球を選らんことにも現れていたと観ている。村上宗隆自身が「バントもあるか」と振り返っていた局面だったが、「閃き」では「打たせるしかないだろう」と来ていた。後になって栗山監督から「任せた」と言われたと言うが、冷静なる評論家としては何とかなる意外に勝つ方法がない」と信じていたので、むしろ気楽に観ていられた。

栗山采配の妙:
あの場での最大の見所は栗山監督の名判断であろう。4番打者の吉田の代走に周東を出したことだ。「延長戦は考えていないんだな」と叫んでいた。周東の脚の速さは大変なもので、大谷を追い越しはしないかと気になったほどだった。3塁のコーチャーだった白井は「回すかどうか判断に迷った」というようなことを回顧して見せたが、村上の打球が飛んだ瞬間に「ひっくり返せた」と信じていた。この作戦だけから考えても、我が方はメキシコよりも上だったと断言できる。

決勝戦だが、何の理論的の根拠もなく「勝つのだろう」と思い込んでいた。今永昇太を先発に使ったのは合理的な判断だと読んだ。今永は良く投げていたと思うが、当たっているターナーに投げたときは真ん中に行ってしまったと見た。失投とか何とか言う前にMLBの一流のバッターにはあのような投球をしてしまえばあのような結果になるという学習になっただろう。思うに、MLBのスカウトたちの今永の評価は高くなったのではないのか。

村上宗隆:
その直ぐ後にホームランで同点に持って行った村上宗隆は、好調だった頃の自信に満ちたスゥイングだったし、振り切った後で打球の行方を見ていた姿勢は紛れもない三冠王の彼そのものだった。あのメキシコ戦での逆転の一打と言い、あのホームランと言い、吉田正尚に並ぶ準MVPの一人に挙げて(「ノミネートして」も)おいて良いと思った。

岡本和真:
岡本和真の働きぶりも賞賛に値する。ジャイアンツ嫌いとしては彼の活躍には少しだけ思い半ばするが、「ここぞ」という場面で2回もホームランを打ってくれたのでは「良くやってくれた。最高だ」と賞賛せねばなるまい。準MVPにノミネートしておこう。同じジャイアンツから来ていた戸郷翔征も素晴らしかった。彼も菅野と同様に「残念ながら良い投手だ」と評価していたので、トラウトを三振に切って取ったフォークボールなどはMLBで通用すると立証して見せていた。

中継ぎ投手陣:
あの決勝戦ではアメリカ側も7人だったかの投手を繰り出して見せていたが、我が方が送り込んだ「若手」の部類に入る投手たちが安打こそ数多く許していたが、抑えきって見せたのは立派だった。特に高橋宏斗はリーグ戦で見たときには「中日はこれほどの投手を抱えてビリとは」と感じさせてくれた逸材だと評価していた。一部に言われている「中日は今季には優勝」とまでは行くまいが、彼の成長には期待が持てる。間もなく同姓のヤクルト高橋奎二を凌ぐ存在になるだろう。

他のあの決勝戦に出てきた伊藤大海、翁田大勢も偉いと思うが、8回に出てきたダルビッシュ有のこの代表ティームへの貢献はどれだけ褒めても褒めきれないと思う。ホームランを打たれて1点差にはされたが、あの場面で表情を変えずに落ち着いて投げきった姿勢からは、流石は10年を超えたMLBでの経験を積んだ投手だと痛感していた。

あらためて大谷翔平を:
大谷翔平の素晴らしさは今さらここに私が云々するまでもない。既に指摘してあったように彼は「MLBの中でも頭三つくらいは抜き出た別格の存在」なのである。変な言い方を敢えてすれば「MLBでの5年間で28歳のショーヘイは史上希な偉大なる選手の領域に一歩も二歩も踏み込んでいる」のだ。ここから先に何処まで成長するか期待が膨らむが、冷静ではあってお悲観論者の評論家は「(働き過ぎで)短命に終わらないで欲しい。後10年は輝き続けてくれ」と願っている。

野手たちの評価:
野手も振り返ってみよう。「凄い。偉い」と評価したいのが中村悠平である。それは、あの決勝戦で初めて大谷の160km超の速球とあのスライダーを受けたことに尽きる。後になってそう報じられていたので、「なるほど。ずっと甲斐が受けていたな」と気が付いた。あのトラウトへの最後のスライダーのシグナルを出すのは迷ったそうだが、あれだけ曲がって空振りを取れたのだから最高だろう。誰だったか「良く捕球してくれた」と賞賛していた意味がここにあった。

守備力から見れば三塁手は岡本和真の方が適任だと評価するが、村上宗隆の一塁守備は見たことがないのであれはあれで良かったのだが、栗山監督も難しい選択だったのではないかと疑っている。源田壮亮の守備力は認めてきているが、負傷したままで起用した選択は疑問の余地があると見ている。だが、結果オーライだった。中野拓夢はエラーが多い阪神の内野手の1人なので、止むを得なかった措置だと判断した。

外野に目を転じて見よう。近藤健介は攻守とも問題ないが、あの決勝戦でトラウトが2塁を狙って走ったときの下からの2塁返への送球は良くなかった。あの場では慌てずに上から投げれば充分に間に合ったように見えた。彼は元はと言えば捕手だったので、そこまでの訓練ができていなかったのが残念に思えた。ヌートバー君はMLBでポジションが取れている選手だ。あれくらい貢献してくれ当然だったが、栗山監督がセンターでトップバッターに使い続けた采配も大いに評価すべきだろう。

結び:
こんなに賞賛を続けるのは滅多にないことだが、何処かにあった裏話を紹介して締めくくろう。栗山監督は名指揮者だったが、言われることには精神的な表現が多く「精神主義を嫌う現代人の選手たちに敬遠されるのでは」との懸念があったそうだ。だが、現実にはあの見事な一致団結しての優勝だった。しかし、何処かにもあった論調に「MLBの上を行く」というのは早計で」「トーナメントで1回勝っただけ」だし、大谷翔平君は「MLBの実力は格が上」と正直に語っていたではないか。


アメリカにおける「リストラ」を考える

2023-03-19 07:36:03 | コラム
何故アメリカの大手企業では「リストラ」を断行するのか:

最近、GAFAM等のアメリカを代表するようになっている企業が遠慮会釈なく「リストラ」を実施して、万単位の人員削減をしていると報じられている。極端なインフレ傾向や激変する国際情勢でも背景にあるのかと疑いたくもなるほど強烈に見える。だが、メデイアはそこに如何なる理由があるのかに触れていない気がする。そこで、長い間アメリカの大手企業の片隅にいた者として、アメリカの経営者たちの経営戦略を覗いてみよう。

彼らが「リストラ」を敢行するのは、アメリカの景気も良く先ずその会社が好調なときが多いのである。だが、当方の持論である「今景気が良いということは、直ぐそこに落ち込む時期が迫っているかもしれない」のである。経営者たちは好調であれば事業の拡張を図り、人員も増強して備えておくのだ。だが、彼ら現状に一寸でも不安材料を見いだすか、先行きの怪しさを感じれば、そこは二進法的思考体系から「今のうちに放漫経営にならぬよう手を打っておこう」と判断するのだ。

現に、ウエアーハウザーが8代目CEO・ジョージの優れた経営力で大きく成長している間でも、2回か3回のリストラが実施されたと記憶する。そして、削減された人員の態勢でも事業は何事もなかったかのように拡張できていた。対日輸出だけを振り返っても、全輸出品種が以前と同じ人員でも著しい成長を遂げていた。尤も、中には先行きの判断を見誤って撤退した部門もあるにはあったが、その分は既存の事業の伸びで充分に補っていた。

要するに、「各事業部門において現存の勢力から起用するか、中途で採用して事に当たらせる人材の選択が適切であれば、多少人員を減らしても充分に立ち行くと判断すれば、必要最低限の人数で事業は成長できると考えるのだ」と見えていた。その分、担当する少数精鋭の者たちにとっての負担も増えるが、業績が上がれば「禄を以て報いよ」で年俸は増額されるのだ。

注目すべき我が国との違いは「必要に応じて中途採用だけして、新卒者を採用して育てること」はないという点だ。自分が必要に応じて採用されたから言えるのだが、彼らの方針は「需要があるが成長しているときに適宜に増員し、一旦不調となれば減員すれば良い」となっていること。人事権を持つ事業部長は何時でも採用を希望して送られてくる部外者の履歴書を何通も持っているし、社内にも代わりになる人材がいると見極めはつけてある。

ここまでは、好調な会社が敢えてリストラをする例を挙げてきたが、勿論経営危機を回避する為の最後的手段のリストラも実行されている。それはその産業界の流れや、その会社の言わば「会社四季報」の内容を子細に見れば見極めが付くことではないか。要するに、GAFAMの経営や将来性に差し迫った危機を見通している人がいるだろうかということ。

我が国とアメリカの根本的な違いは「アメリカには雇用というか労働力に移動の柔軟性があること」だろう。仮令リストラされても、実力と経験があれば必ず異業種にでも転職の可能性があるという違いだ。アメリカの会社暮らしの20有余年の間に何度か「あなたは前にはどのような会社にいたのですか」とごく普通に尋ねられたことがあった。この質問が失礼ではない世界なのである。

我が国の企業社会では、未だそこまでの次元には達していないと思う。同時に「常に2~3社からの”job offer“を持っていないようでは」という評価の仕方もある世界だ。
そういうoffer(他社からの勧誘)を抱えていれば「リストラなんてドンとこい」なのである。但し、労働組合の「リストラ」は法律的に話の筋が違うので、ここでは取り上げようがないのだ。