新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

ヌートバーも二刀流の候補だったようだ

2023-03-12 07:40:55 | コラム
ヌートバーと大谷翔平に見るアメリカのスポーツの在り方:

ラーズ・ヌートバーは高校卒業の際に、USC(南カリフォルニア大学、有名な私立大学である)にQBで推薦入学するところを、父親に「フットボールは怪我が多い」と止められて、野球を選んだのだとのネット情報があった。

これを知って「なるほど、彼が韓国戦とチェコ戦で見せたセンター前の飛球を飛び込んで取った素早い勇敢な動きは、フットボールで鍛えた身体能力が現れたのか」と納得した。

それだけではない、このUniversity of Southern CaliforniaにはTrojansの愛称で広く知られた強豪のフットボール部があるのだ。そのTrojansに推薦入学を取れたいたとは、QBとしても並々ならぬ実力の持ち主だったことを表しているのだ。

フットボールのXリーグの助監督やコーチだった人物も指摘していた事で、アメリカではよくある話なのだ。それは、大学を終えてプロになるときに「フットボールとベースボールの何れを採るか」と悩む優秀な選手が多いということ。

最近の例には、NFLのシアトルシーホークスのQBラッセル・ウイルソンがいる。彼はフットボールのプロの道を選んだが、シーズンが終わればMLBにも出場する野球の実力の持ち主だった。

彼らは三大スポーツの野球、フットボール、バスケットボールの何れの実力をも在学中に十分に鍛え上げてあるから、プロになるとき全てのリーグから勧誘されるので、その選択に迷うのだそうだ。この点がアメリカでは我が国の体育会制度とは異なって、一つの種目に専念するのとの違いを表しているのだ。

即ち、ヌートバーはフットボールという競技の司令塔であるQBとして十分に訓練されていたので、あの飛び込んで捕球することを恐れない身体能力を鍛えてあったのだということ。MLBではそもそもはそういう三大スポーツの中から野球を選んでプロの道に進んだ者が多かったのだ。

だが、私が知る限りでは70年代の後半辺りから野球だけで鍛え上げられたドミニカやキューバやアルゼンチン等のアフリカ系の南アメリカの選手が増えてきたので、やや趣が変わってきていた。

解りやすく言えばヌートバーのような言わば”two-way“(多分「二刀流」とやらの英語での表現だろう)の選手が減って、野球だけを経験してきた単能機のようなプレーヤーが増えてきている。

彼らの多くは非常に身体能力が優れているが、ヌートバーやラッセル・ウイルソンのような二刀流や三刀流の訓練を経ているわけではない。この辺りを表して「MLBの身体能力ショー化」と皮肉ったのだ。ヌートバーは未だ25歳と若いので、そのうちにそのtwo-wayの能力を活かしてMLBのスター選手に成長していくだろう。

一方の我らの大谷翔平君は、少なくとも高校までは「野球部」育ちで、その類い希なる素質を他の競技ででも鍛え上げてあったわけでもあるまいと思う。それでも、アメリカでMLBに入ってからは、察するにアメリカ流のトレーニングで徹底的に鍛え上げられ、彼自身も研鑽に励んだので、その素質があそこまで花が咲いたのだろう。

あのもの凄い成長ぶりを見るにつけても、もしも大谷君が当初の希望通りに高卒でアメリカに行ってバスケットボールやフットボールをも加味した訓練を受けていたら、もっと早い時点で今以上に成長していただろうかと考えさせられている。

なお、two-wayと言っても、フットボールでは同じティームで通常はどちらか一方だけに限られているのに、オフェンスとデイフェンスの両面を掛け持ちする選手のことを言うのだ。決して二つや三つの競技を兼務するのではない。

故に、大谷翔平君を「二刀流」と表現するのはおかしいと思っている。だが、そうは言うが、彼が投手として打者としてMLB史上でも希な偉大な"two-way“選手であることは間違いないと思う。

あれほどの偉大な野球選手が我が国から出てくるとは夢にも思わなかった。彼の足の速さを見せられると、フットボールをやらせれば、オフェンスのティームでどのポジションを選ぶかな、などと考えて楽しんでいる。