内側の黒田氏と外側の真田教授/鈴置氏の間には興味深い意見の対立があった:
私が興味を持って聞いた意見の対立は韓国に40年も駐在しておられる産経新聞の黒田勝久氏と、こちら側の専門家である真田幸光愛知淑徳大学教授と元日経新聞源論説委員の鈴置高史氏の尹錫悦大統領が3.1記念日の演説の中で「日本は韓国のパートナーである」と述べたことに対する見解が全く相容れない違いがあったことだ。
鈴置氏は「韓国の罠にはまるな」という分かりやすい主張で、大統領がどう語ろうと韓国の本質は変わっていない。その点は懸案である朝鮮半島労働者問題への韓国側が提示した解決案は文在寅時代と何ら変わることがないように、西側に与したような話をまともに解釈しない方が良い」と主張された。
ところが、黒田氏はすでに指摘したように「韓国は北朝鮮の核とICVMの脅威が増した以上、西側に与することに舵を切ったのであり、鈴置氏の主張は当たらない」と否定した。真田教授はこの黒田氏の指摘に対して感情をあらわにして批判されたのも驚きだった。
私には尹大統領の演説の解釈が、長い年月韓国に駐在され内側から韓国を経験してその事情に精通された黒田氏と、外側である日本におられて情報網を構築され、資料と統計を豊富に持っておられるだろう両氏と、両極端のように違っていた点が非常に印象的だった。私には「なるほど、黒田氏が内側で見た韓国と、両氏が外側から観察された韓国とは全く異なっているのだ」と見えたのだ。
即ち、私の長年の主張である「俗に言われている『真実は一つしかない』のではなくて、出来事は一つである。その出来事を見る人の立ち位置と角度、所属、思想信条、経験と物の考え方等々次第で自ずと変わってくるものだ」から見れば、長年内側から韓国に慣れ親しんでこられた黒田氏の解釈と、外側に折られる真田教授と鈴置氏のような専門家が分析された解釈が異なってくるのも自然なことだと考えている。
私はこの両者の解釈が異なっていても、何れが正解であるかのような判断はできないと思うのだ。それは理屈を言えば「正解は当事者である尹大統領の心中にしかないのであるかだ」なのである。その辺りは、2015年の日韓で「不可逆的」と合意したはずの慰安婦問題の協定も、文在寅政権になればいともアッサリと覆された悪しき先例があることを見れば、何れの主張を取るかと考えても意味がないかもしれないのだ。