新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

対米交渉術とは

2015-08-01 08:09:16 | コラム
私はContingency planの世界と交渉する為には何が必要かを問いたいのだ:

アメリカの大手紙パルプ林産物会社に20年以上も在籍し対日輸出を担当した経験から学んだ彼らの作戦というか交渉術の一端をあらためてご紹介します。これは何度か方々で語り且つ書いてきたことですが、我が国の文化と思考体系とは相容れないようで、未だに理解と認識が十分にされていないようだと感じます。

それは「彼らは重大な交渉の席に臨む際には本来の目標である案に加えて"contingency plan"を準備してくること」です。この英語の意味は「第2または第3の案を準備する」ということです。代案というような訳もあるかも知れませんが、玉砕戦法を採ることもなく、落としどころを探ることもせず、次善の策にも近いかも知れません。第1案が自社にとって最も有利なものであるのは疑いもありません。

私の経験では「日本側は当たって砕けろ」か「そこまで譲れば相手が納得するか」を探りに来ることが多かったのです。彼らは5,000マイルを妥協点を探る為に飛んでくることはしません。第1案が通らなければ、第2案で(フットボールで言う)同じだけのヤード数を稼ごうと目指して来るのです。この思考体系の下で20数年を過ごしましたから、マスコミがTPP交渉で「妥結が近い」などと観測記事を書くのは「異文化」に対して不勉強であると断じるのです。

このような彼らの思考体系と作戦はアメリカの一流の私立大学のビジネススクールで学んだ程度では直ちに経験出来ることではないようだと危惧しますし、経験上からも指摘します。極言すれば「彼らはゲーム感覚に近い感じで『これを言うことで失うものはない』という議論を展開します」が、これに対して「論争と対立」を怖れる我が国の方々は萎縮されてしまうのです。しかし、私が知る限りではこれに屈することなく彼らを論破された方が何人もおられました。

私が誤っているかも知れませんが「外務省にはそこまで戦えるだけの度胸がない方が偉くなっておられるのではないか」と思えてなりません。甘利大臣もそういう"contingency plan"を持って着席する連中と交渉されているとの強烈な認識がおありであろうと思いたいのですが。彼らの三段論法の思考体系を破る為には、早くから"debate"の教育を受けておく必要があると思うのです。その前にTOEIC等という我が国の至らざる英語教育の集大成の如き試験を忘れた教え方をすべきだと痛感しております。

我が国の英語教育では「思考体系と文化の違い」を全く等閑にしており、これは対外交渉を進める為には致命的な欠陥となっていると見えます。問題は「英語で如何に論旨を構築する力を養うか」にあるのです。この力をつけることと「ペラペラ」は全く別なことです。相手の思考体系を知らずして議論をするのは無謀ではないのか言っているのです。



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