新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

「訳語に難が」

2020-05-17 09:24:17 | コラム
産経新聞社校閲部長・清湖口敏氏は言う:

一昨15日の清湖口敏氏の“社会的距離”と題されたコラム「言葉のひと解き」は興味深く読んだ。中でも

>引用開始
“感染症予防の分野で「ソーシャルデイスタンシング」という言葉が用いられているようで、ここから「社会的距離」の訳語が出てきたと思われるのだが、世間一般でもメディアでも「ソーシャルでいスタンス」が主流になっているような気がする。「~デイスタンシングが適切か「~デイスタンスか・・・と迷っていたら、新たな問題が浮上した。政府の専門家会議が先頃提案した「新しい生活様式」の中で「身体的距離」という言葉が使われていたのだ。「身体的~」なら英語名も「ソーシャル」ではなく「フィジカル」としなければならない・・・と考えていたら、もう訳が解らなくなっていた。”(以下略)
<引用終わる

と指摘しておられたのは尤もだと思った次第。私はこの“social distance”か「社会的距離」が出てきたときには、てっきり政府の担当部署かマスメディアが素直に英語を直訳したのかと解釈した。だが、「安全な距離」という意味だろうから、それが何故“social”なのかは理解できなかったし、もしかして「社会的距離」という日本語が先に創造されていたのではないかとすら疑っていた。

そこで、思い出したのが私がアメリカで数多く出会った奥方たちの中で最も知的で教養人だと思っていた元の上司の一人の前妻から、4月16日に「シアトル市の都市封鎖(“lockdown”なのだが、我が国では「ロックダウン」というカタカナ語の方が普及してしまった)の状況を知らせてくれたEmailには“ advised to still shelter at home and maintain safe distances while in public,”とあったことだった。

この英文と清湖口氏の論調から考えると、もしかしてアメリかでは“social”か“physical”か“safe“かというような「一定の距離を保つ」為の「答えは一つ的」な表現は使われていないと疑うに至った。それとも、我が国には何処かにおられる権威あるアメリカ事情の専門家が、アメリカの新聞を読まれたか24時間CNNでも何でも見られるようにされて、いち早く“social distance”を紹介されたのではないかと推察した。だが、「オーバーシュート」を誤って使われた尾身茂副座長は「身体的距離」を採用されたようだったのだから、飛び付いたのはマスメディアではないのかとも考えた。

私は仮令元の英語がどうあろうと直訳するのではなく、「安全な距離を保つ」というような所謂「意訳」をする方が、一般の人たちが理解しやすいのではないかと考えている。と言うことは、清湖口氏が指摘された「訳語に難」を支持するものである。余談だが、マスメディアも専門家会議も何時になれば「オーバーシュート」(“overshoot”)には「感染者の爆発的増加」という意味はないと訂正されるのだろうか。



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