新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

学校では教えられていない英語の分類 #2

2020-07-19 10:49:59 | コラム
英語の言葉の分類:

(承前)

Swearwordとは:
この言葉は一般的に「汚い言葉」と訳されているようだ。その解説に入る前に、是非この言葉についての私の思い出を採り上げておきたい。

私が1972年8月にアメリカの会社に転進して、生まれて初めてアメリカを出張という形で訪問した。その帰路はカナダ西海岸のブリティッシュ・コロンビア州のヴァンクーヴァーからとなった。そこで母親と家内に土産でも買うかと、空港の免税店立ち寄った。応対してくれた販売員はかなり高齢の日系の女性で、当然英語で対応された。これはと思った商品が予算を超過していたので、何気なく“Jesus Christ!” と言ってしまった。

するとその女性がキッとなって急に日本語に変わって「貴方は何という言葉を使うのですか。少しくらい英語ができるからと言っていい気になって汚い言葉を使うとは何事ですか。即刻お止めなさい。私は戦争中にここで育ったために日本語も英語も中途半端になってしまったが、それでもswearwordを使ってはいけないくらいは心得ています。これから先は絶対に使わないようにしなさい」と、将に声涙ともに下る忠告だった。私は恥じ入って言葉もなかった。その教訓を肝に銘じた。

この今思い出しても恥ずかしい出来事を紹介したので、swearwordとはどういう種類の言葉かが、お解り頂ければ良いのだと願っている。

この言葉についての定番的な解説や「絶対に使ってはならない」というような説明を聞いたことも読んだこともない。私が好んで採り上げる邦人が使った例として採り上げるのが「沢尻エリカの “Oh, shit!” 」である。彼女は「別に」だったかの一言で評判が悪くなって語学留学と称してアメリカに渡った(逃げた?)。その留学から帰って来た時に成田空港で記者たちに追い回されて逃げる際に、ハンドバッグを落としてしまった。そこで出た台詞が“Oh, shit!” だったのだ。「何と言うことか」か、男性ならば「こん畜生」とでも言いたかったのだろう。

しかしながら、ここで“shit”が出てきたので解ることは、先ずアメリカに行く前に予備知識として「swearwordについて何も知らされていなかったようだ」という点である。だが、これは断じて彼女の責任ではないと言いたい。私がこれまでの経験では、大学でも何処でもこういう言葉について教えていないことが明白だったのだから。もしも、学校で教えられたと言われる方がおられたら是非お知らせ願いたい。

次に判明することが重要なのだ。それは、何も彼女だけに限ったことではないと思うが、swearwordがいきなり出てきたということは「彼女はその程度の階層の者から英語を教えられたのか」あるいは「彼女がアメリカ接していた連中がそういう低い階層に属する者たちが圧倒的に多かったのか」の何れかだったと読める点なのだ。これまでに繰り返して説明して来た通り、例えばアッパー・ミドルかそれ以上の家庭に育った者とか、一流企業に勤務する者たちの間では、少なくとも公衆の面前では絶対にと言って良いほど、swearwordなどは使わないものなのである。

更に言えることは、swearwordが言うなれば「禁句」であると知らなかった人たちには、例えば“It is warm like hell, today.“*1だとか”What the hell is going on here?” *2 などという表現を聞くと、無邪気に「格好良い」と思ってしまい「自分もそのうちに真似て使ってみよう」となってしまうものなのだ。この辺りには、“you know“をやたらに挟んでしまうのと似た現象で、“you know”も矢張り一定の階層以下で多用されるとは知らず、真似ることになってしまうのだ。要するに、“you know“は「貴方が有能である」という証明にはならないと知るべきだ。

注:*1は「今日はなんてくそ暑いんだ」で、*2は「一体全体ここで何をやってやがるんだ」とでも訳せば良いと思う。これらは使ってはいけないswearwordの簡単な例文だとご理解願いたい。

Oxfordはswearwordとは”A rude or offensive word, used especially to express anger.としているが、これでは弱いと思う。Websterは”to swear”を”Use profane or obscene language.”としている。

私は当初はswearwordが何であるかを知らずに覚えていた。だが、知らないのは恐ろしいもので、一旦覚えると何となく使ってみたい誘惑に駆られるものであった。これは戦後に駐在した占領軍の兵士たちが使ったために我が国で広まったのである。特に「ゴッダメ」=“God damn it.”がその代表格だっただろう。英語が何であるか良く知られていなかったあの頃には、何の躊躇いもなくアメリカ人が使う言葉を真似していた人が多かったと思っている。

何故いけないかは上に述べたように明かである。それは私が所属したアメリカの大手というか株式を上場しているような会社の本社組織に属する年俸制の社員ともなれば、人前では使ってはいけない、ならない言葉なのである。それだけでは具体性がないかも知れないので更に説明すれば、この言葉を使うと言いたいことを強調できるのだが、それが同時に「無教養さ」、「語彙の貧弱さ」と「品格の欠如」とを表し「お里が知れる」(知的な下層階級と告白したのと同じ)ことになるのである。ここまでで、swearwordがslangとは明確に一線を画しているとお解り願えると思う。

次にswearwordの具体的な例を挙げていこう。

shit.=「チクショウ」か「何だよ」辺りになるだろうが、下品である。
bull shit=これも「コンチクショウ」であり「この野郎」にもなるだろうか。“horse shit”と言う場合もある。
He is a hell of a salesman.=「彼は凄腕のセールスマンだ」なのだが、このhellがいけないのだ。“hell of a driver”と言えば「運転が凄く上手い人」という具合だ。
God damn it! これも「コンチクショウ」で、日本語でも余り褒められない表現だ。
Jesus Christ.=「なんてこった」か「コンチクショウ」辺りが訳語だろうか。
fuck.→日本語に訳すのも躊躇うような言葉。fuckingとも言う。
ass hole=日本語にも「何とかの穴の小さい奴」という表現があるが、それとは意味が違うものの、汚い言葉の代表格であろう。
Oh, brother.=「何としたことか」とでも言おうか。
Son of the bitch と言うのもあるが、これは戦後間もなくは「サナダベチ」のように使われていた記憶がある。
「オーマイガー」(=Oh, my God.のことらしい)が近頃テレビで大流行だが、これも好ましくない”swearword”だと知るべきだ。せめて“Oh, my.”までで切っておくべきだ。何故にテレビ局はタレントどもに言わせているのかと思う。

汚い言葉の例はまだ山ほどあるが、この辺で打ち止めにする。その言葉がswearwordかどうかの判断の基準には、先ず“four letter word”がある。日本語と妙な符号であるが4文字の言葉を指す。例えば上記の例にも4文字のものが幾つかある。次が動物である。そして最後に宗教関連である。その例は上に掲げたが“brother”もそのうちだろう。

要注意事項:
ここまでに採り上げた言葉の分類の中では、idiomを除いては十分に注意して使うようにして欲しい。繰り返しになるが、swearword=「汚い言葉」は絶対に避けるべきだ。迂闊に使えば上述のように品格の問題になる。残る二つについては時と場合を熟慮して使って欲しい。だが、どれがswearwordかは解らないと言われそうだが、思いつく対策を一つだけ挙げておこう。

それは、数年前に気が付いたのだが、映画やテレビのドラマに出てくる警官や守衛等の役では、この言葉が多用されている。私は口語を知ろうと思えば映画を見ると良いと言ってはきたが、英語を学ぼうと思って気安く副音声などにしないことだ。私が最も巧みにswearwordを操っていると見た映画は、一寸古い例になるが、“Die hard 2”の空港警備隊のLorenzo隊長役だった。この役者は日常生活でもこの言葉だけで暮らしているのかと思うほど巧みに使っていたのだった。

参考までにswearwordを沢山知って置きたい思われれば、このDVDかVideoを買うか借りて見ることか?これ以外では、アメリカ人を主体として外国人と話をしている時に生ずる問題だから、こちらが知らずに使ってしまったか否かを相手に尋ねればよいし、会話の相手が上記に例に挙げたような言葉を使ったようだったならば、“What do you mean by saying so?”であるとか、“What do you mean by using such an expression like hell of a sales person?”とでも質問する方法もあると思う。



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