■平成22年8月9日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
―――――――――――――――――――――――――――――――――
★妻亡くし 茫然旅人 訪ね来た 憶良衷心 肝胆照らす
大君の 遠の朝廷と しらぬひ 筑紫の国に 泣く子なす 慕ひ来まして
息だにも いまだ休めず 年月も いまだあらねば 心ゆも 思はい間に
うち摩き 臥しぬれ
《遠く離れた 筑紫へと 子供みたいな お前連れ 落ち着かん間に 月日経ち
しんみり話も せん内に お前病気に なってもた》
言はむ術 為む術知らに 石木をも 問ひ放け知らず 家ならば 形はあらむを
うらめしき 妹の命の 我をばも 如何にせよとか 鳰鳥の 二人並び居
語らひし 心背きて 家さかりいます
《どしたら良えか 分からへん 石や木ィかて 答えよらん あんな元気で 居ったのに
どないせ言うんや このわしに 二人仲良う 暮らそうと 言うたお前は もう居らん》
―山上憶良―〔巻五・七九四〕
家に行きて 如何にか吾がせむ 枕づく 妻屋さぶしく 思ほゆべしも
《家帰り どしたら良んや このワシは 寝床を見ても 寂しいだけや》
愛しきよし かくのみからに 慕ひ来し 妹が情の 術もすべなさ
《可愛らしく あんないっぱい 甘え来た お前気持に 応えられんで》
悔しかも かく知らませば あをによし 国内ことごと 見せましものを
《悔しいな こんなことなら 景色良え 筑紫の国中 見せたったのに》
妹が見し 楝のち花は 散りぬべし わが泣く涙 いまだ干なくに
《栴檀の 花散りそうや 思い出の よすが無うなる 癒えもせんのに》
大野山 霧立ち渡る わが嘆く 息嘯の風に 霧立ちわたる
《大野山 霧が立ってる わし嘆く 溜息たまって 霧になったで》
―山上憶良―〔巻五・七九五~七九九〕
世の中は 空しきものと 知る時し いよよますます かなしかりけり
《人の世は 空っぽなんやと 知ったんや 思うてたより ずうっと悲しい》
―大伴旅人―〔巻五・七九三〕
【空しきものと】へ
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★妻亡くし 茫然旅人 訪ね来た 憶良衷心 肝胆照らす
大君の 遠の朝廷と しらぬひ 筑紫の国に 泣く子なす 慕ひ来まして
息だにも いまだ休めず 年月も いまだあらねば 心ゆも 思はい間に
うち摩き 臥しぬれ
《遠く離れた 筑紫へと 子供みたいな お前連れ 落ち着かん間に 月日経ち
しんみり話も せん内に お前病気に なってもた》
言はむ術 為む術知らに 石木をも 問ひ放け知らず 家ならば 形はあらむを
うらめしき 妹の命の 我をばも 如何にせよとか 鳰鳥の 二人並び居
語らひし 心背きて 家さかりいます
《どしたら良えか 分からへん 石や木ィかて 答えよらん あんな元気で 居ったのに
どないせ言うんや このわしに 二人仲良う 暮らそうと 言うたお前は もう居らん》
―山上憶良―〔巻五・七九四〕
家に行きて 如何にか吾がせむ 枕づく 妻屋さぶしく 思ほゆべしも
《家帰り どしたら良んや このワシは 寝床を見ても 寂しいだけや》
愛しきよし かくのみからに 慕ひ来し 妹が情の 術もすべなさ
《可愛らしく あんないっぱい 甘え来た お前気持に 応えられんで》
悔しかも かく知らませば あをによし 国内ことごと 見せましものを
《悔しいな こんなことなら 景色良え 筑紫の国中 見せたったのに》
妹が見し 楝のち花は 散りぬべし わが泣く涙 いまだ干なくに
《栴檀の 花散りそうや 思い出の よすが無うなる 癒えもせんのに》
大野山 霧立ち渡る わが嘆く 息嘯の風に 霧立ちわたる
《大野山 霧が立ってる わし嘆く 溜息たまって 霧になったで》
―山上憶良―〔巻五・七九五~七九九〕
世の中は 空しきものと 知る時し いよよますます かなしかりけり
《人の世は 空っぽなんやと 知ったんや 思うてたより ずうっと悲しい》
―大伴旅人―〔巻五・七九三〕
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