【掲載日:平成21年11月18日】
わが園に 梅の花散る ひきかたの
天より雪の 流れ来るかも
【大宰府の梅、観世音寺北方】
天平二年〔730〕正月
ここ 大宰府帥の館
集うは 大宰府管下の国司ら
いずれも 都より派遣の高官 総勢三十二人
庭に咲き誇る 梅を愛でての宴だ
帥 旅人が 宴を仕切る
「集いし面々 四つの組に 分ける
それぞれ 八名づつ 車座となり
組毎に 選者を立て
各人の詠みたる歌の「これは」を談じ
一人一作を 詠ずべし」
厳選された 一人一作の 歌詠が始まった
【第壱組の歌】
正月立ち 春の来らば かくしこそ 梅を招きつつ 楽しきを 経め
《正月の 新春来たぞ 今日の日を 梅褒めたたえ 楽しゅう過ごそ》
―大弐紀卿―〔巻五・八一五〕
「さすが 大弐殿 きっかけの寿ぎ歌 見事 見事」〔旅人〕
梅の花 今咲ける如 散り過ぎず わが家の園に ありこせぬかも
《今まさに ここで咲いてる 梅の様に 家の庭でも 咲き続けてや》
―少弐小野大夫―〔巻五・八一六〕
梅の花 咲きたる園の 青柳は 蘰にすべく 成りにけらずや
《梅の花 咲いてる庭の 柳葉は 鬘に丁度 ええんと違うか》
―少弐粟田大夫―〔巻五・八一七〕
春されば まづ咲く宿の 梅の花 独り見つつや 春日暮さむ
《春来たら 最初咲く花 梅の花 独り見るには 惜しい春やな》
―筑前守山上大夫―〔巻五・八一八〕
「憶良殿 泣かせてくれるな 大伴郎女がこと」〔旅人〕
世の中は 恋繁しゑや かくしあらば 梅の花にも 成らましものを
《人生は 関わり事が 多いよって 梅の花でも 成りたいもんや》
―豊後守大伴大夫―〔巻五・八一九〕
梅の花 今盛りなり 思ふどち 插頭にしてな 今盛りなり
《梅の花 今真っ盛り みんなして 髪にかざそや 盛りの花を》
―筑後守葛井大夫―〔巻五・八二〇〕
青柳 梅との花を 折りかざし 飲みての後は 散りぬともよし
《梅の花 柳と一緒に 髪に挿し 飲み飽かしたら 散ってもええで》
―笠沙弥―〔巻五・八二一〕
「満誓殿は 花より酒か」〔旅人〕
わが園に 梅の花散る ひきかたの 天より雪の 流れ来るかも
《梅の花 空に舞うよに 散って来る 天から雪が 降ってきたんか》
―主人―〔巻五・八二二〕
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