ユニーク古典現代訳(大阪弁万葉集改題)

日本の古典を訳します。そのままストンと腑に落ちる訳。なんだ、こうだったのかと分かる訳。これなら分かる納得訳。どうぞどうぞ

古事記ものがたり・中つ巻(11)倭建命に下りる 過酷の使命

2013年03月07日 | 古事記ものがたり
倭建命たけるに下る 過酷の使命

凱旋がいせん倭建命たける 待つめい

ひがしおもむき そむきなす
十二の国を 征服うちて取れ










如何いかなるおおせ に落ちぬ
伊勢大御神おおみかみ 宮たず

「我れを死ねよと おおせしや
 西いまだ 脱がぬくつ
 兵士へいれずに ひがしとは」

愚痴こぼ倭建命たけるに 叔母倭比売命やまとひめ
これ持てあたう 草薙くさなぎ
つるぎと共の ひと












出発いでたち至る 尾張国

国造みやつこ娘 美夜受比売みやずひめ
めたりしが 帰路きろにてと

ひがし進みて 悪神わるがみ
言葉手懐てなずけ また東









来たる相模の 国造みやつこ
倭建命やまとたけるに 告げ言うは
「野の沼まう 荒し神」
退治たのむと けしかける

らしめすと 倭建命たけるみこ
敵にあらずと で向くに
はいる野原に 火が襲う








最早もはやこれまで サラバとて
旅に連れし おきさき
弟橘おとたちばなの 比売命ひめみこと
名を呼ぶ刹那せつな ふと気付く 

叔母倭比売命おばもらいし 袋なか
火打石いしにひらめき 草薙剣けんりて
ぎ刈りて 迎えの火

無事に戻りて 国造みやつこ
切り捨て 殺し 火を放ち
はかしたる 賊ほふ

進み浦賀水道うらがを 渡りしに
海神うみがみ波を 荒れさせて
舳先へさきめぐりて 船行かず

「渡りならずば 受けし任務にん
 果たさで何の 面目めんぼく
 きさきわらわが 犠牲にえとなる」

弟橘おとたちばなの 比売命ひめみこと
言いて波上なみうえ 菅畳すげだたみ
 の畳に 絹畳
敷かせ海へと おりなる

 静まりて 船行くに
弟橘おとたちばなの 比売命ひめみこと
波間隠れ に 謡う歌

相模野さがみの燃えて 迫る火の
窮地最中さなかで わらわの名
呼び し我が君 慕わし君よ

  さ嶺嶮ねさし 相模の小野に
  燃ゆる火の 火中ほなかに立ちて
   問いし君はも
                ―古事記歌謡(二十五)―

渡り終え着く 上総かずさ
とどまり七日 る浜に
流れ寄るくし 形見ぐし
追うてしかと 御陵はか造る