ユニーク古典現代訳(大阪弁万葉集改題)

日本の古典を訳します。そのままストンと腑に落ちる訳。なんだ、こうだったのかと分かる訳。これなら分かる納得訳。どうぞどうぞ

古事記ものがたり・中つ巻(10)熊曽を討ちて 名を貰う

2013年03月04日 | 古事記ものがたり
熊曽くまそを討ちて 名を貰う

垂仁すいにん天皇おおきみ そのお子の
淤斯呂別命おしろわけみこ 即位して
景行けいこう天皇おおきみ お成りなる

一丈いちじょう二寸にすん お身丈みたけ
四尺ししゃく一寸いっすん 膝下ひざした
偉丈夫いじょうふすは 八十やそのお子

















景行けいこう天皇おおきみ 耳届く

大根王おおねのみこの た娘
兄比売えひめ弟比売おとひめ 眉目みめしと

大碓命おおうすみこと 召しるに
 が妻にと 横に取り
別人べつを名借りて 差しいだ

目敏めざと景行天皇おおきみ さと
荒立あらだてじやと 胸納おさめおく

くご席で 小碓命おうすにと
「兄のくご席 ぬを
 さとせ」の仰せ 申し付く









五日いつかつにも 大碓命おおうす
席にでぬを 怪訝あやしみて
如何いかがしや」と 問いくに

小碓命おうす平然 答えるは
かわや入るを 待ち捕え
 手足ぎ取り こも投棄つ」

聞いた景行天皇おおきみ 恐れなし
小碓命おうす気性きしょうの 激しさに 
そば置くいとい 命下す

 西の国にと 我れ聞くに
 熊曽くまそたける 二人あり
 そむく無礼に 断くだせ」

おうめい受け 小碓命おうすみこ
出発いでたち前に 叔母おばぎみ
倭比売命やまとひめみこ 訪ねしに
たまわる衣装 ご懐剣かいけん

西に至りて うかがうに
熊曽建たける屋敷は にぎわいて
むろ落成なりうたげ 膳支度したく











うたげまぎれて 任務にんをぞと
叔母拝領はいりょうの 衣装着け
乙女ふんして はべる席
熊曽建たける目に止め しゃく望む

目伏せ顔伏せ そそぐ手の
ひさごに変わり 懐剣かいけん
兄のたけるの 胸を刺す

逃げる仰天ぎょうてん おとたける
なるかと追いて 尻突刺けば

観念弟建たける 「そも誰ぞ」
大和やまと天皇きみの子 小碓命おうすなり」

「さてこそ強き 皇子みこなるや
 我が名名告なのりを 召されませ」

言うやこと切れ これちて
倭建命やまとたけると 名が変わる

 の噂を 耳にして
帰路 寄りたるは 出雲国

同じたけるの 故ちて
出雲いずもたけるの 懇意こんい得る

イチイがしわ偽刀にせがたな
帯びて誘うは 斐伊いびの川








倭建命やまとたけるは 水浴びて
上がり着替えに 大刀たちえる

おくれ水浴び 知らじかや
着替え帯びるは かし大刀たち

 勇者いずれぞ いざ勝負」
迫る真大刀まだちの 倭建命たけるみこ
抜けぬかたなに 散る出雲建たける

誇る倭建命たけるの 謡う歌

出雲いずもたけるが 大刀たち
つる幾重いくえもに 飾れるが
刀身無しかたなぞ あわれにも

  八つ芽さす 出雲いずもたける
  ける大刀たち 黒葛つづらさわ
   さ身無しにあわれ
                ―古事記歌謡(二十四)―