【掲載日:平成25年3月5日】
風を疾み いたぶる波の 間なく 我が思ふ君は 相思ふらむか
恋に没入れば 他何も見えん
寝ても覚めても 面影浮かび
女焦がれは 絶え間無続く
気逸らす術ない 待つ身であれば
白栲の 袖を触れてよ 我が背子に 我が恋ふらくは やむ時もなし
《互い袖 交わし共寝てから あんたへの うちの焦がれは 休みなしやで》【正述心緒】
―作者未詳―(巻十一・二六一二)
咲く花は 過ぐる時あれど 我が恋ふる 心のうちは やむ時もなし
《咲く花は そのうち散るが うちの恋 焦がれ止まんで 散るときないわ》【寄物陳思】
―作者未詳―(巻十一・二七八五)
宮材引く 泉の杣に 立つ民の やむ時もなく 恋ひ渡るかも
《杣山に 働く民は 休みなし ひっきりなしの 焦がれやうちは》【寄物陳思】
―作者未詳―(巻十一・二六四五)
あしひきの 山下響み 行く水の 時ともなくも 恋ひ渡るかも
《山の下 音響かす水は 限りない うち焦がれんも 限りなしやで》【寄物陳思】
―作者未詳―(巻十一・二七〇四)
庭清み 沖へ漕ぎ出る 海人舟の 楫取る間なき 恋もするかも
《波無うて 沖漕ぐ楫は 休みなし うちの焦がれも 休む間ないわ》【寄物陳思】
―作者未詳―(巻十一・二七四六)
(波風がないと舟を進めるのは楫しかない)
酢蛾島の 夏身の浦に 寄する波 間も置きて 我が思はなくに
《夏身浦 寄せ来る波は 間ぁ置くが 間置きなしやで うち思てんは》【寄物陳思】
―作者未詳―(巻十一・二七二七)
風を疾み いたぶる波の 間なく 我が思ふ君は 相思ふらむか
《風強よて 揺れる波やで 間ぁなしに うち思てるが あの人どやろ》【寄物陳思】
―作者未詳―(巻十一・二七三六)
大伴の 御津の白波 間なく 我が恋ふらくを 人の知らなく
《御津寄せる 波間ぁなしや うちかても 間なし思うが 知らん顔やで》【寄物陳思】
―作者未詳―(巻十一・二七三七)
大海に 立つらむ波は 間あらむ 君に恋ふらく やむ時もなし
《海に立つ 波かて一寸 休むのに あんた焦がれん 休む間ないで》【寄物陳思】
―作者未詳―(巻十一・二七四一)
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