【掲載日:平成25年3月22日】
阿太人の 梁打ち渡す 瀬を早み 心は思へど 直に逢はぬかも
噂広がる 一夜のうちに
あっという間の 他人目の変わり
一人歩くも ひそひそチラリ
まして逢うなぞ 思いも寄らず
人言の 繁き間守ると 逢はずあらば つひにや子らが 面忘れなむ
《他人の目を 窺いしてて 逢わへんと あの児このわし 顔忘れん違うか》【正述心緒】
―作者未詳―(巻十一・二五九一)
人目多み 常かくのみし 候はば いづれの時か 我が恋ひずあらむ
《他人の目を 憚る日ィを 過ごしてて 何時このわしの 焦がれ止むんや》【正述心緒】
―作者未詳―(巻十一・二六〇六)
佐保の内ゆ あらしの風の 吹きぬれば 帰りは知らに 嘆く夜ぞ多き
《佐保里で 噂酷うに 立って仕舞て 通い出来んと 嘆く夜多いで》【寄物陳思】
―作者未詳―(巻十一・二六七七)
(帰りは知らに=行くことないと帰りはない=通えない)
阿太人の 梁打ち渡す 瀬を早み 心は思へど 直に逢はぬかも
《梁掛ける 川瀬早うて 渡れんで 思い募るが よう逢い行かん》【寄物陳思】
―作者未詳―(巻十一・二六九九)
(梁=川の瀬で魚を捕る仕掛け)
(瀬を早み=噂が立って妨げられて)
しなが鳥 猪名山響に 行く水の 名のみ寄そりし 隠り妻はも
《轟いて 流れる水か 音高こに 噂だけ立ち 逢われん妻や》【寄物陳思】
―作者未詳―(巻十一・二七〇八)
(猪名山→名のみ)
牛窓の 波の潮騒 島響み 寄そりし君は 逢はずかもあらむ
《牛窓の 潮騒音が 響く様に 噂立てられ 逢うこと出来ん》【寄物陳思】
―作者未詳―(巻十一・二七三一)
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