【掲載日:平成25年3月1日】
めづらしき 君を見むとこそ 左手の 弓取る方の 眉根掻きつれ
訪れ待って 女は焦れる
来るか来ないか 来ないか来るか
来んはずないに 来んのは怪訝し
もしや夜道で 変事に逢たか
夕占にも 占にも告れる 今夜だに 来まさぬ君を いつとか待たむ
《今夜来る 言う占いが 出とんのに 来えへんあんた 何時来る言んや》【正述心緒】
―作者未詳―(巻十一・二六一三)
大海の 荒磯の洲鳥 朝な朝な 見まく欲しきを 見えぬ君かも
《毎朝に 洲鳥餌捕る 毎朝に 見たいあんたは 一向に来んわ》【寄物陳思】
―作者未詳―(巻十一・二八〇一)
夜並べて 君を来ませと ちはやぶる 神の社を 祷まぬ日はなし
《毎晩に 来させて欲しと 神さんに 願うてるんや 日ごと夜ごとに》【寄物陳思】
―作者未詳―(巻十一・二六六〇)
めづらしき 君を見むとこそ 左手の 弓取る方の 眉根掻きつれ
《滅多来ん あんた来て欲し 願いして 左眉掻き 待ってるのんに》【正述心緒】
―作者未詳―(巻十一・二五七五)
(左手=大事な方の手=「めづらしき」に対応)
あしひきの 山桜戸を 開け置きて 我が待つ君を 誰れか留むる
《桜戸を 開け放しして 待ってるに 何方があんた 引き留めてんや》【正述心緒】
―作者未詳―(巻十一・二六一七)
待ちかねて 内には入らじ 白栲の 我が衣手に 露は置きぬとも
《待っとって あんたまだやが 家入らんで うちの袖口 露で濡れても》【寄物陳思】
―作者未詳―(巻十一・二六八八)
高山に たかべさ渡り 高々に 我が待つ君を 待ち出でむかも
《背伸びして 首長ごにして 待つうちは あんた出迎え 出来るんやろか》【寄物陳思】
―作者未詳―(巻十一・二八〇四)
(たかべ〈小鴨〉→高々)
真袖持ち 床うち掃ひ 君待つと 居りし間に 月かたぶきぬ
《両袖で 床を清めて あんた待ち そうこ為とる間 月西の方や》【寄物陳思】
―作者未詳―(巻十一・二六六七)
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