令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

家待・越中編(一)(28)坂に袖振れ

2011年01月07日 | 家待・越中編(一)友ありて
【掲載日:平成23年3月15日】

可敝流廻かへるみの 道行かむ日は
      五幡いつはたの 坂に袖振れ 我れをしおもはば



うたげ遊び 尽きはせぬが
役目終えての 帰りが 気をかす
三月二十六日 
じょう 久米広縄くめのひろつな館での うたげが 打ち上げとなった
遊び疲れもあるが 
別れ思いが 酒うたげを 湿めらせる

霍公鳥ほととぎす 今鳴かずして 明日あす越えむ 山に鳴くとも しるしあらめやも
《ほととぎす 今鳴かへんで 明日あした行く 山で鳴いても 手遅れちゃうか》
                         ―田辺福麻呂たなべのさきまろ―〔巻十八・四〇五二〕

くれに なりぬるものを 霍公鳥ほととぎす 何かかぬ 君にへる時
《木の繁み 色成ったに ほととぎす なんで鳴かへん 福麻呂あんたるに》
                         ―久米広縄くめのひろつな―〔巻十八・四〇五三〕

霍公鳥ほととぎす こよ鳴き渡れ 燈火ともしびを 月夜つくよなそへ その影も見む
《ほととぎす 影見たいんで 灯火ともしびを 月や思うて ここ鳴いて来い》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―〔巻十八・四〇五四〕

可敝流廻かへるみの 道行かむ日は 五幡いつはたの 坂に袖振れ 我れをしおもはば
可敝流かえる道 とおって行く日 五幡いつはたの 坂で袖振れ わし恋しなら》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―〔巻十八・四〇五五〕

別れに際し 田辺福麻呂さきまろ
歌集一冊と 歌綴りひとくさを 残していった

「田辺福麻呂歌集」  
それには  添え書きが附いていた
《家持殿  お手元に 本歌集 残し置き候
 我輩それがしつたなふであと 残すに躊躇ためらいあるも
 古今の歌 集めみの試み 聞き及び
 我が作 片隅にてもの心 斟酌しんしゃく賜りたく
 本来  口頭にてのお許し 得べき処
 恥を忍びての所業しょぎょうならば 書面にてのお願い
 寛容賜りたく 非礼の段 平にご容赦ようしゃ

 いまひとくさの歌綴り 
 これなん  
 過ぐる 天平十六年〔744〕難波うたげにてのもの
 当時様子  伝えよと 
 橘諸兄もろえ様から託されしにより 持参
 「君臣きずな 読み取り頂き
 おおやけへの 心いたし 変わりなく」
 との  お言葉 お伝えいたし候》

〔さすが 田辺福麻呂さきまろ殿 
 橘諸兄もろえ様の使い と聞き及びしに
 何の言伝ことづても無しの 数日
 いぶかり思いしが よもやの用心であったか
 それにしても  良き歌集と歌綴り
 有難くの  頂戴といたそう〕


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