令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

家待・越中編(一)(18)越え隔(へな)りなば

2011年02月11日 | 家待・越中編(一)友ありて
【掲載日:平成23年2月8日】

・・・白雲しらくもの たなびく山を
      磐根いはね踏み 越えへなりなば 恋しけく の長けむそ・・・



上司  部下の 垣根越えての付き合い
同族ならでは  あるも
家持と池主の仲 
思いの いでどころ 考えの めぐらしどころ
全て知る  旧知の間柄は 
こここしの ひとりが深め
歌のり取りが 確固の度を高めてきた

いよいよの 出発いでたちを 間近に
家持の 別れ哀惜あいせきは きわみへ

かきかぞふ 二上山ふたがみやまに かむさびて 立てるつがの木 もとも 同じ常磐ときはに しきよし わが背の君を  
ひいふうの 二上山ふたがみやまに ふるうから あるつがの木の みきえだは もとは同じや 池主あんたわし 同じ氏族や なあ池主あんた
朝去らず 逢ひて言問ことどひ 夕されば 手たづさはりて 射水川いみづかは 清き河内かふちに 出で立ちて 
《毎朝のに 顔合わせ 夕方なると 手たづさえ 射水いみずの川に 行ったなあ》
わが立ち見れば あゆの風 いたくし吹けば 水門みなとには 白波高み 
妻呼ぶと 洲鳥すどりさわく 葦刈ると 海人あま小舟をぶねは 入江ぐ かじの音高し
 
《川のほとりで 見てたなら ひがしの風が つよ吹いて 水門みなとに 白波なみが たこ寄せて
 連れ呼ぶ洲鳥すどり 鳴きさわぐ 葦刈る海人あまの ぐ小舟 入江あたりで 梶音おとしてた》
そこをしも あやにともしみ しのひつつ 遊ぶ盛りを 天皇すめろきの す国なれば みこと持ち 立ち別れなば  
《そんな景色を 楽しんで 遊ぶ季節の さかりやに 国の仕事で 仕様しょうなしに 都行くんで 別れした》
おくれたる 君はあれども 玉桙たまほこの 道行くわれは 白雲しらくもの 
たなびく山を 磐根いはね踏み 越えへなりなば 恋しけく の長けむそ
 
《残った池主あんた まだえで 旅行くわしは 白雲しらくも
 棚引く山の 岩踏んで 遠く離れて 仕舞しもうたら 池主あんた恋しい 日ィ続く》
そこへば 心し痛し 霍公鳥ほととぎす 声にあへく たまにもが 手に巻き持ちて 
朝夕あさよひに 見つつかむを 置きてかば惜し

《それを思たら 胸痛い ほととぎす時期 作るたま 池主あんたたまなら 手ぇ巻いて
 朝夕あさゆ見ながら 行けるのに 置いて行くのん 堪えられん》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―〔巻十七・四〇〇六〕

わが背子せこは たまにもがもな 霍公鳥ほととぎす 声にあへき 手に巻きて行かむ
池主あんたはん たまやったらな ほととぎす 鳴く時作り 手巻き行くのに》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―〔巻十七・四〇〇七〕
                                【四月三十日】 


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