【掲載日:平成23年5月3日】
・・・鶏が鳴く 東の国の 陸奥の 小田なる山に 黄金ありと・・・
歌作りの心は 高揚の芽生えを見ていた
〔人麻呂殿 赤人殿の名を
確固たるものとした長歌
その長歌 何としても 己のものとせねば〕
思いに耽る家持の許
感涙の 文書が届く
先の 僧平栄来越時には 齎されなかった
天下公民に発せられた『黄金出土』の詔書
大伴佐伯両氏に 言葉及び
《・・・その祖先 朝廷親衛軍として 仕え来たり
功績甚大にして 今に及ぶ
子孫たるもの
同じの心もて 仕え奉るを旨とし・・・》
大伴家の本領とする 伴造のその名
帝の 詔書に 麗麗しく記載
家持 感奮極に達し
迸る胸中 口を衝いて 歌となる
葦原の 瑞穂の国を 天降り 領らしめしける
皇御祖の 神の命の 御代重ね 天の日嗣と 領らし来る 君の御代御代
《葦育ち 実り豊かな この国を 天下られて 治め来た
ご先祖神は 代重ね 後を継がれて 治めらる 天皇の 御代御代に》
敷きませる 四方の国には 山川を 広み厚みと
奉る 御調宝は 数へえず 尽くしもかねつ
《お治めなさる 卿々は 山川多て 豊かやで
献上される 宝物 数え切れんに 多数ある》
然れども 我が大君の 諸人を 誘ひ給ひ 善き事を 始め給ひて
黄金かも 確けくあらむと 思ほして 下悩ますに
《そうした中で 聖武帝が 民に呼び掛け 導かれ 大きな事業 起こされて
黄金の量が 足りるかと 心密かに 悩まれた》
鶏が鳴く 東の国の 陸奥の 小田なる山に 黄金ありと
申し給へれ 御心を 明らめ給ひ
《丁度その時 陸奥の 小田の山から 黄金出て
知らせを受けた 天皇は 心晴れ晴れ なさられて》
天地の 神相珍なひ 皇御祖の 御霊助けて
遠き代に かかりし事を 朕が御代に 顕はしてあれ 食す国は 栄えむものと
《「起こした事業 尊いと 天地神々 思われて ご先祖御霊 ご加護呉れ
遠い昔に 起きたのと 同じことを 朕の代に 起こされたんは この国が 栄える証拠 違いない」》
神ながら 思ほしめして 物部の 八十伴の男を 衣従の 向けのまにまに
老人も 女童児も 其が願ふ 心足ひに 撫で給ひ 治め給へば・・・・・・
《仰せなされて 諸々の 臣下の心 纏められ
老も若きも 女児も 願う処の 安らぎを 得られする様に 申された・・・》
【「辺にこそ死なめ」へ続く】
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます