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疑問の構造とは何か -サイホン現象を例に(5-b)-
初等物理の気まぐれ考究,物理教育放談
/
2006-04-04 07:35:51
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本稿は、
1月31日:「
サイホン現象を観た時の二つの衝撃
」
2月 5日:「
疑問の構造とは何か -サイホン現象を例に(1)-
」
2月14日:「
疑問の構造とは何か -サイホン現象を例に(2)-
」
3月 6日:「
疑問の構造とは何か -サイホン現象を例に(3)-
」
3月12日:「
疑問の構造とは何か -サイホン現象を例に(4)-
」
3月21日:「
疑問の構造とは何か -サイホン現象を例に(5)-
」
の続きにあたるものです。
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このように、小中学校の理科の先生には、純心なる子供の疑問の目と心をあたたかく見つめ育み、また、その大切さを親にも伝えるという重要な役目があると思う。そして、こういう役目を活き活きと自信をもってこなすためには、先生が自ら、種々の科学的疑問に対する、(通り一遍の答えの知識ではなく)透徹した考察と解決の達成体験をもっていることが求められるのだ。
しかし私は、現状の日本の公教育機関は、このような先生の役目を十分支えているとはいい難いと感じている。1990年代頃を中心に、初等・中等教育機関の新規教員採用は著しく抑制され、さらに時を同じくして進行し始めた生徒の理科離れの影響を受けて、理科教諭、とりわけ物理系の先生の存在の重要性が、少なくとも一般の目からは、認識され難くなってしまった。私が直接耳にした話では、物理の先生が皆仕方なく化学を教えているとか、高校の理科の先生に物理系の出身者がいなくなってしまった県もあるということだ。
私たちの日常生活を取り巻く自然には、不思議と疑問の種が溢れている。そして大切なのは、その個々の疑問に対する答えを知ることよりもむしろ、きちんと考えていけば、いくつかのより簡単な性質に帰着させることで、全てが矛盾なく納得できる、、こういう理解のプロセスの実体験を積み重ねることなのだと思う。ただし、この場合の「理解」とは、理由をつけることとは少し違うことに注意してほしい。自然現象については(あるいは自然以外の事象でも)、突き詰めた根本の理由は説明できないことがほとんどだ。しかし、一見相反する個々の現象を、一貫無矛盾に見る方法は必ず存在する。これを見つけるのが科学であり、その手立てが科学的・論理的思考なのである。このような思考力の糧となる理解体験を多くの一般人までが持ってこそ、国民が自分の頭脳で物事を判断するという「国民主権」の原則も成り立ち得るのではないか。
「ゆとりから学力重視」の流れが起きている教育行政であるが、一からの透徹した理解体験に結びつけることにはどう考えても適さないコンピュータとか電子機器のような人工物の技術教育を、初等教育段階から指向する傾向が見えるところに重大な疑問を感じる。自分の思考できちんと理解する体験を積むには、シンプルな自然現象を題材にするのが適切であることは、ほとんど自明のことと思う。
-つづく-
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