はぎわら_m の部屋
社会・時事批評、オピニオン、初等物理の気まぐれ考究、物理教育放談

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本稿は、
1月31日:「サイホン現象を観た時の二つの衝撃
2月 5日:「疑問の構造とは何か -サイホン現象を例に(1)-
2月14日:「疑問の構造とは何か -サイホン現象を例に(2)-
の続きにあたるものです。
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水は、誰しもが日常的によく親しんでいる物体であるにもかかわらず、水(あるいは液体一般)の性質が、整理された形で説明されているのは、ほとんど見たことがない。しかし、サイホン現象の疑問の源泉へ向かってたどってきた我々は、今や、マクロな物体としての水の本性を明らかにしなければならなくなった。

液体の性質の詳細に立ち入ることが今の目的ではないので、結論的な定性表現にとどめるが、水は、ミクロな構成要素(とりあえずは水分子)が、固体(氷)のときと同程度の強さでつながってはいるが、その要素間のつながりの向きやトポロジーにほとんど制約がない、、こういう物体なのである。

その結果どういう性質が現れるかというと(ただし平衡状態で)、

(1) 基本的には、マクロな一体を成そうとする(理由がなければ球状になる)が、

(2) 体積を変えずに外形状を変えることはきわめて容易(エネルギーをあまり要さず)に起きる。
  ただし、形を変えながらでも、一体性を保つので、気体などを通過させることがない。

(3) 要素間の平均距離(密度)を変えることで、等方的な圧縮応力(水圧)状態が実現する。
  ある一体の水が、外力を受けながら、一定の位置と形を占めるときには、水圧が適当な連続分布をした状態で、容器などの外界物との間で釣り合い状態をつくっている。


上の表現は堅苦しいので、直感イメージをつくりやすいモデルを示したいのだが、これが案外難しい。固体であれば、小球がバネによって前後左右上下につながった立体構造体を考えればよく、このモデルでかなり本格的な物性までが説明できる(ただし結晶の転位などは扱えない)。しかし、液体の場合は、内部要素間の結合のトポロジーが切れている様をうまく例えるモデルがない。”隣と常に離れないように接しているが、転がって向きは自由に変わるような多数の球の集まり”を想像すると多少のイメージの助けになるだろうか。磁石に吸い付いて磁化した、多数のパチンコ玉や砂鉄の集まりがやや似ていると言えないこともない(大部違うところもあるが)。

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このような水において、どういうときに、一体構造が切れてしまうかというと、体積を一定に保ちながら外形を変えていって、どこかに'くびれ'をつくり(全体を細くしても構わないが)、くびれの断面積部分の分子数をほとんどゼロに近づけることができたときだ。分子間の結合が強くても、マクロな形状に対して数個の結合であれば、容易に引き剥がされる。

-つづく-

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