このところ話題を呼んでいる仮想現実(VR)は不格好で高価なため、消費者の本流を引き付けることはできないと思います。しかし、VRを推進する企業にとっては、VRが増収増益に寄与する可能性があります。
よく知られているように、VRを好むのはマニアしかいません。何しろ、大きくて重いヘッドセットを装着し、ケーブルを介してパソコン(PC)に接続して使用する必要があります。ヘッドセットをかぶったままでは周囲を見ることができないため、日常的に使用するには不便ということもあります。しかも、ヘッドセットの値段は高く、フェイスブック(FB)の「リフト」は599ドルで、携帯電話機メーカーHTC(2498.台湾)の「Vive(バイブ)」の価格はさらに200ドル高くなっています。さらにヘッドセットの他に、グラフィックスとオーディオ処理を担う高性能PCを用意する必要もあります。VRの主な購入者は、出費と不便さに耐えられるビデオゲーム愛好家でしょう。
ただし、たとえVRの売れ行きが限定的であったとしても、VRが一部企業の業績を上振れさせる可能性はあります。リフトが発売されてから12カ月間の販売台数に関するアナリスト予想は50万台から200万台で、後者ならフェイスブックは12億ドルの増収を記録します。それを予想しているアナリストによると、同社は他にもゲームソフト販売で1億ドルから3億ドルを売り上げる可能性があるといいます。
リフトが当初から利益を生むかについてフェイスブックはコメントしていませんが、同社経営陣のこれまでの話しぶりから判断すると、リフトは損益ゼロでしかないようです。ゲームソフト販売がある程度の利益をもたらす可能性があるため、リフトとゲームソフトを合わせた収支は若干の黒字となる一方、全体的な粗利益率を押し下げる見通しです。
•強気派はソニーの25%増益を予想
VRの最大の受益者はソニー(6758)かもしれません。同社が今秋の発売を予定しているヘッドセット、「プレーステーションVR(PSVR)」は399ドルと他社製品よりも低価格です。リフトがPCを必要とするのに対し、PSVRはゲーム機のプレーステーションとともに使用します。
ジェフリーズのアナリスト、アチュル・ゴヤル氏はソニーの投資判断を「買い」としており、PSVRが業績に大きく寄与すると指摘。同氏はプレーステーション利用者の15%がPSVRを購入するという想定に基づき、その販売台数が発売から2年間で年1000万台に達すると予想しています。さらに同氏はさまざまな調査に基づき、PSVRの採算が発売当初から黒字となり、発売から2年目には1台当たりの粗利益が50ドルに達すると試算しています。
加えて「触れる」感覚を提供するコントローラーなど、付属品の売り上げが見込まれ、さらに、ゲームソフトの販売が増えてソニーのロイヤルティ収入が増えることも予想されます。
ゴヤル氏の試算では、販売台数を年間1000万台と想定し、さまざまな恩恵を総合すると、ソニーの粗利益は年間12億5000万ドル増え、営業利益は6億2500万ドル増えると予想されます。同社の2016年3月期の予想営業利益が26億ドルであることから、PSVRが25%の増益をもたらす可能性があるわけです。
•エヌビディアとクアルコムにも追い風
エヌビディア(NVDA)はPC用の高性能な画像処理半導体を製造しています。リフトやバイブは高性能PCを使用することから、VRがPC市場におけるエヌビディアの売り上げを押し上げる可能性があります。同社は現在、HTCのバイブに対応したゲーム用グラフィックス・カードも販売しています。
よりシンプルな形のVRとして、スマートフォンに安価なアダプターを組み合わせる方法もあります。その一例が、サムスン電子(005930.韓国)が100ドルで販売している「ギアVR」です。負荷のかかる画像生成は、スマホに組み込まれたクアルコム(QCOM)のモバイル用半導体が担います。VRの臨場感を高めるためには数多くの技術革新が必要であり、そこにクアルコムのビジネスチャンスがあります。
いつの日か半導体の進歩により軽くて洗練された低価格のVRヘッドセットが登場し、誰もが使いたいと思うようになるかもしれません。しかし、それは遠い先のことであり、今のところVRはニッチ市場でしかないのです。ただし、一部の企業にとっては価値あるニッチ市場となる可能性があります。(ソースWSJ)
よく知られているように、VRを好むのはマニアしかいません。何しろ、大きくて重いヘッドセットを装着し、ケーブルを介してパソコン(PC)に接続して使用する必要があります。ヘッドセットをかぶったままでは周囲を見ることができないため、日常的に使用するには不便ということもあります。しかも、ヘッドセットの値段は高く、フェイスブック(FB)の「リフト」は599ドルで、携帯電話機メーカーHTC(2498.台湾)の「Vive(バイブ)」の価格はさらに200ドル高くなっています。さらにヘッドセットの他に、グラフィックスとオーディオ処理を担う高性能PCを用意する必要もあります。VRの主な購入者は、出費と不便さに耐えられるビデオゲーム愛好家でしょう。
ただし、たとえVRの売れ行きが限定的であったとしても、VRが一部企業の業績を上振れさせる可能性はあります。リフトが発売されてから12カ月間の販売台数に関するアナリスト予想は50万台から200万台で、後者ならフェイスブックは12億ドルの増収を記録します。それを予想しているアナリストによると、同社は他にもゲームソフト販売で1億ドルから3億ドルを売り上げる可能性があるといいます。
リフトが当初から利益を生むかについてフェイスブックはコメントしていませんが、同社経営陣のこれまでの話しぶりから判断すると、リフトは損益ゼロでしかないようです。ゲームソフト販売がある程度の利益をもたらす可能性があるため、リフトとゲームソフトを合わせた収支は若干の黒字となる一方、全体的な粗利益率を押し下げる見通しです。
•強気派はソニーの25%増益を予想
VRの最大の受益者はソニー(6758)かもしれません。同社が今秋の発売を予定しているヘッドセット、「プレーステーションVR(PSVR)」は399ドルと他社製品よりも低価格です。リフトがPCを必要とするのに対し、PSVRはゲーム機のプレーステーションとともに使用します。
ジェフリーズのアナリスト、アチュル・ゴヤル氏はソニーの投資判断を「買い」としており、PSVRが業績に大きく寄与すると指摘。同氏はプレーステーション利用者の15%がPSVRを購入するという想定に基づき、その販売台数が発売から2年間で年1000万台に達すると予想しています。さらに同氏はさまざまな調査に基づき、PSVRの採算が発売当初から黒字となり、発売から2年目には1台当たりの粗利益が50ドルに達すると試算しています。
加えて「触れる」感覚を提供するコントローラーなど、付属品の売り上げが見込まれ、さらに、ゲームソフトの販売が増えてソニーのロイヤルティ収入が増えることも予想されます。
ゴヤル氏の試算では、販売台数を年間1000万台と想定し、さまざまな恩恵を総合すると、ソニーの粗利益は年間12億5000万ドル増え、営業利益は6億2500万ドル増えると予想されます。同社の2016年3月期の予想営業利益が26億ドルであることから、PSVRが25%の増益をもたらす可能性があるわけです。
•エヌビディアとクアルコムにも追い風
エヌビディア(NVDA)はPC用の高性能な画像処理半導体を製造しています。リフトやバイブは高性能PCを使用することから、VRがPC市場におけるエヌビディアの売り上げを押し上げる可能性があります。同社は現在、HTCのバイブに対応したゲーム用グラフィックス・カードも販売しています。
よりシンプルな形のVRとして、スマートフォンに安価なアダプターを組み合わせる方法もあります。その一例が、サムスン電子(005930.韓国)が100ドルで販売している「ギアVR」です。負荷のかかる画像生成は、スマホに組み込まれたクアルコム(QCOM)のモバイル用半導体が担います。VRの臨場感を高めるためには数多くの技術革新が必要であり、そこにクアルコムのビジネスチャンスがあります。
いつの日か半導体の進歩により軽くて洗練された低価格のVRヘッドセットが登場し、誰もが使いたいと思うようになるかもしれません。しかし、それは遠い先のことであり、今のところVRはニッチ市場でしかないのです。ただし、一部の企業にとっては価値あるニッチ市場となる可能性があります。(ソースWSJ)
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