日本時間の7月1日、時が止まる。でも、心配することはない。ほんの1秒のことだから。
地球の公転と私たちのカレンダーを合わせるためにうるう年が存在するのと同様に、地球の自転と時計を合わせるためにうるう秒がある。この種の微調整は、原子時計が発明されるまでは問題にならなかった。たとえば原子時計のひとつであるセシウム時計は、地球の回転に基づく時計よりもずっと正確に時間を測ることができる。正確さが異なれば、やがて2つの時計にはズレが生じる。つまり、地球の自転を基準とした時間と原子の時間を合わせるうるう秒が必要になる。
うるう秒は、協定世界時(UTC)の23時59分59秒(日本標準時JSTの翌7月1日8時59分59秒)に追加される。1秒未満の時間と向き合っている人や、コンピュータプログラムがうるう秒に対応できずにクラッシュでもしないかぎり、その1秒に気がつく者はいないだろう。しかし、それは現実に起こりうる。2012年に追加されたうるう秒により、「Reddit」「Gawker Media」「Mozilla」などのアプリケーションやサービスがダウンしたことは記憶に新しい。(参考記事:「“閏秒”、3年半ぶり25回目の実施」)
米コロラド州ボルダーにある米国立標準技術研究所(NIST)の物理学者、ジュダ・リバイン氏は、「それが問題になる主な理由は、多くのシステムが正しいうるう秒対策をできていないためです」と言う。うるう秒は不規則に発生するため、プログラマーは修正プログラムをテストすることが難しいのだ。
うるう秒はどうやって決まる?
米ワシントンDCにある米海軍天文台で報時部門のチーフサイエンティストを務めるデメトリオス・マトサキス氏によると、「地球はだんだん遅くなっているが、その変化は予測できず、一部の期間に集中してうるう秒が発生することがある」という。
国際地球回転・基準系事業(IERS)が常に地球を監視しており、国際電気通信連合(ITU)にうるう秒の追加を勧告する。これを受けたITUが、追加の最終決定を行う。
最近のうるう秒は2012年に追加されたが、1980年代初頭には、時間科学者らが毎年のようにうるう秒を追加していた。(ソース ナショナルグラフィック)
うるう秒が初めて導入されたのは1972年。ワシントンDCにあるスミソニアン国立航空宇宙博物館の地理学者アンドリュー・ジョンストン氏によれば、当時すでに原子時計と天文学的時計の間には10秒の開きがあり、世界中の天文学的時計に、一気に10秒を付け足した。
標準のWindowsシステムは非対応
リバイン氏は、NISTのタイムキーパーがうるう秒を調整する責任を負っている。時刻の調整は、NISTが23時59分59秒(UTC)を2回送信することで行われる。
NIST本部があるコロラド州が属する山岳部時間はUTCより7時間遅れているため、6月30日午後6時は、ストレスの多い時間帯になりそうだ。「午後6時前後はすっかりパニック状態になるでしょう」
うるう秒の追加がすべてうまく行っても、リバイン氏のチームは翌朝、さまざまな問題に関する大量のメールを受け取るのが通例だ。
Appleのデバイスはうるう秒を認識するが、そうでないものもある。Googleの携帯端末は、通常は原子時計に関係するインターネットの報時と同期するが、「標準のWindowsシステムを使っている場合、うるう秒は無視されます」とリバイン氏。
金融市場も、うるう秒を考慮している。ニューヨーク証券取引所は、6月30日は通常より30分早い午後7時30分に閉めて、システム対応に取り組むそうだ。
セシウムを利用した原子時計。ドイツ北部にあるドイツ国家計量標準機関にて撮影。(PHOTOGRAPH BY FOCKE STRANGMANN, AP)
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リバイン氏によると、GPSなどのナビゲーションサービスは、うるう秒を採用したことがない。位置情報の計算には正確な時間の測定が必要なため、内部時計を止めてしまえば、位置が不正確になってしまうからだ。
ただし、エンドユーザーがこれに気づくことはない。GPSシステムが受信機――アウトドア用品店で入手したものであれ、スマートフォンであれ――に、うるう秒の情報を送るため、デバイス上では正しい時刻が表示されるようになるからだ。しかし、「本当のGPSの時刻は、一般的な時刻と16秒前後ずれています」とリバイン氏。
何百年無視しても1、2分のずれ
うるう秒に頭を悩ませるぐらいだったら、いっそ全面的に廃止してしまえという議論もある。リバイン氏によると、うるう秒の追加を決定するNIST内でも意見が分かれ、今年中にもう一度議論が行われることになっているらしい。
スミソニアン博物館のジョンストン氏は、うるう秒に「とらわれない」派である。同氏の周囲には、廃止を望むエンジニアもたくさんいるが、「天文学界の知人たちは残したがっているようです」。
「どうやら世の中はうるう秒をなくす方向に動いているようですが」とジョンストン氏。しかし我々は、国際電気通信連合の最終判断を待たなければならない。
「個人的には、こんなことやめてしまいたいです。その代償になるのは、原子時間が天文学的時間から徐々に離れていくことです」と言うのはリバイン氏だ。しかし、何百年たっても、わずか1、2分の違いにしかならない。
それも悪くないとリバイン氏は考えている。うるう秒を廃止すれば、「私の人生はもっと楽になります」
地球の公転と私たちのカレンダーを合わせるためにうるう年が存在するのと同様に、地球の自転と時計を合わせるためにうるう秒がある。この種の微調整は、原子時計が発明されるまでは問題にならなかった。たとえば原子時計のひとつであるセシウム時計は、地球の回転に基づく時計よりもずっと正確に時間を測ることができる。正確さが異なれば、やがて2つの時計にはズレが生じる。つまり、地球の自転を基準とした時間と原子の時間を合わせるうるう秒が必要になる。
うるう秒は、協定世界時(UTC)の23時59分59秒(日本標準時JSTの翌7月1日8時59分59秒)に追加される。1秒未満の時間と向き合っている人や、コンピュータプログラムがうるう秒に対応できずにクラッシュでもしないかぎり、その1秒に気がつく者はいないだろう。しかし、それは現実に起こりうる。2012年に追加されたうるう秒により、「Reddit」「Gawker Media」「Mozilla」などのアプリケーションやサービスがダウンしたことは記憶に新しい。(参考記事:「“閏秒”、3年半ぶり25回目の実施」)
米コロラド州ボルダーにある米国立標準技術研究所(NIST)の物理学者、ジュダ・リバイン氏は、「それが問題になる主な理由は、多くのシステムが正しいうるう秒対策をできていないためです」と言う。うるう秒は不規則に発生するため、プログラマーは修正プログラムをテストすることが難しいのだ。
うるう秒はどうやって決まる?
米ワシントンDCにある米海軍天文台で報時部門のチーフサイエンティストを務めるデメトリオス・マトサキス氏によると、「地球はだんだん遅くなっているが、その変化は予測できず、一部の期間に集中してうるう秒が発生することがある」という。
国際地球回転・基準系事業(IERS)が常に地球を監視しており、国際電気通信連合(ITU)にうるう秒の追加を勧告する。これを受けたITUが、追加の最終決定を行う。
最近のうるう秒は2012年に追加されたが、1980年代初頭には、時間科学者らが毎年のようにうるう秒を追加していた。(ソース ナショナルグラフィック)
うるう秒が初めて導入されたのは1972年。ワシントンDCにあるスミソニアン国立航空宇宙博物館の地理学者アンドリュー・ジョンストン氏によれば、当時すでに原子時計と天文学的時計の間には10秒の開きがあり、世界中の天文学的時計に、一気に10秒を付け足した。
標準のWindowsシステムは非対応
リバイン氏は、NISTのタイムキーパーがうるう秒を調整する責任を負っている。時刻の調整は、NISTが23時59分59秒(UTC)を2回送信することで行われる。
NIST本部があるコロラド州が属する山岳部時間はUTCより7時間遅れているため、6月30日午後6時は、ストレスの多い時間帯になりそうだ。「午後6時前後はすっかりパニック状態になるでしょう」
うるう秒の追加がすべてうまく行っても、リバイン氏のチームは翌朝、さまざまな問題に関する大量のメールを受け取るのが通例だ。
Appleのデバイスはうるう秒を認識するが、そうでないものもある。Googleの携帯端末は、通常は原子時計に関係するインターネットの報時と同期するが、「標準のWindowsシステムを使っている場合、うるう秒は無視されます」とリバイン氏。
金融市場も、うるう秒を考慮している。ニューヨーク証券取引所は、6月30日は通常より30分早い午後7時30分に閉めて、システム対応に取り組むそうだ。
セシウムを利用した原子時計。ドイツ北部にあるドイツ国家計量標準機関にて撮影。(PHOTOGRAPH BY FOCKE STRANGMANN, AP)
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リバイン氏によると、GPSなどのナビゲーションサービスは、うるう秒を採用したことがない。位置情報の計算には正確な時間の測定が必要なため、内部時計を止めてしまえば、位置が不正確になってしまうからだ。
ただし、エンドユーザーがこれに気づくことはない。GPSシステムが受信機――アウトドア用品店で入手したものであれ、スマートフォンであれ――に、うるう秒の情報を送るため、デバイス上では正しい時刻が表示されるようになるからだ。しかし、「本当のGPSの時刻は、一般的な時刻と16秒前後ずれています」とリバイン氏。
何百年無視しても1、2分のずれ
うるう秒に頭を悩ませるぐらいだったら、いっそ全面的に廃止してしまえという議論もある。リバイン氏によると、うるう秒の追加を決定するNIST内でも意見が分かれ、今年中にもう一度議論が行われることになっているらしい。
スミソニアン博物館のジョンストン氏は、うるう秒に「とらわれない」派である。同氏の周囲には、廃止を望むエンジニアもたくさんいるが、「天文学界の知人たちは残したがっているようです」。
「どうやら世の中はうるう秒をなくす方向に動いているようですが」とジョンストン氏。しかし我々は、国際電気通信連合の最終判断を待たなければならない。
「個人的には、こんなことやめてしまいたいです。その代償になるのは、原子時間が天文学的時間から徐々に離れていくことです」と言うのはリバイン氏だ。しかし、何百年たっても、わずか1、2分の違いにしかならない。
それも悪くないとリバイン氏は考えている。うるう秒を廃止すれば、「私の人生はもっと楽になります」