生物の多様性に対して絶滅に加担している先進国の消費者！

生物多様性とは、「種内の多様性」「種間の多様性」「生態系の多様性」を指し、生物多様性というと、野生の動植物の種類の多さと思われがちですが、これは「種間の多様性」にあたり、個体同士の遺伝子の違いや同じ種でも生息域の違いによる個体群の遺伝子の違いは「種内の多様性」といい、森林・里山・干潟・珊瑚礁など生息域の違いは「生態系の多様性」と言うそうです。なお生物には微生物や家畜も含まれます。

近年、乱獲・乱開発、汚染、侵略的外来種、気候変動などにより生物多様性への脅威が高まっていますが、直接的に動植物を利用している産業や途上国を除いて、生物多様性の損失が人類にもたらす影響の大きさというものを認識されていませんでした。しかし人類は、何らかの形で生態系サービスの恩恵を受けており、その生態系サービスの基盤は生物多様性にあります。一度、失ってしまった生態系サービスを人類が作り出すのは困難であるため、生物多様性の保全と持続可能な利用は、人類全体の問題なのです。

シドニー大学の研究によると、30%の種が先進国の消費によって絶滅の危機にさらされていることが明らかになっています。この研究は、世界各国の経済構造をモデル化することで、コーヒー、ココア、木材といった財が、生産過程でどの程度の生物多様性の損失を引き起こしてきたを明らかにしたものです。

つまり国際的な市場で取引される農作物などの商品がもたらす生物多様性への脅威を評価した研究の成果をネイチャーに発表したのです。研究では、国際自然保護連合のレッドリストに掲載されている２５０００種の絶滅危惧動物について、１５０００種類のコモディティ（商品）生産との関係を調べ、さらに、その生産物が絶滅要因になっている商品がどこで消費されているかを５０億件ものサプライチェーンの分析により評価したものです。

その結果、お茶、砂糖、コーヒー、バナナ、羊毛、ゴム、タバコ、パーム油、など多くの商品が生産過程で絶滅危惧種へ脅威をもたらしており、その大部分が先進国で消費されていることが明らかになったのです。輸入品が原産地で脅かしている種数のランキングではアメリカが第一位で約１０００種類、２位は日本で約７００種類、３位のドイツは約３００種類だったそうです。ただアメリカは生物多様性条約を締結していないので締結国中では、地球規模の絶滅リスクを高めているのは日本と言うことになります。しかしそうは言ってもアメリカが締結していないから良いと言うわけではありません。アメリカが最も生物多様性に対して脅威を当てえているのです。と同時に、日本がそれに続き多いということを認識してほしいですね。

輸出品により脅かしている絶滅危惧種の数が多いのは２００種類に近いインドネシアを筆頭にマダガスカル、パプアニューギニアと続くそうです。なお著者らは、節滅危惧種への脅威全体の約３０％は国際貿易によるものであると言っています。それらの多くの品目が先進国の人々が日常的に利用する嗜好品なので、このような事実を知って消費者としてできること、すなわち生物多様性への脅威の少ない方法で生産された商品を積極的に選択するといった消費行動が必要だと言っています。

先ほども書きましたが、一度、失ってしまった生態系サービスを人類が作り出すのは困難です。生物多様性の保全と持続可能な利用は、人類全体の問題なのです。