骨粗しょう症は骨がスカスカになる病気で、寝たきりの原因となる太ももの骨折など、ちょっとしたことでも骨折しやすくなります。それがきっかけとなって寝たきりになってしまう人も少なくありません。骨粗しょう症はこの15年で倍増しています。対策には「骨の材料となるカルシウムをとること」だと思いがちですが、カルシウムの効果には限界がありカルシウムを吸収しやすい食べ物などといっしょにとると良いと言います。さらに、血管に“骨”ができて心筋こうそくの原因になることや、骨密度が高くても骨折してしまう人がいることも最近の研究から分かってきました。
最新の骨粗しょう症対策として、50代、60代の女性10人で骨密度の検査をしたところ、骨粗しょう症の方が1人、予備軍が2人見つかりました。しかも、骨粗しょう症の方のX線写真を見ると、なんと動脈にカルシウムがたまっていました。心臓の専門家に尋ねると「血管に骨ができている」と言うそうです。と言っても実際に骨ができるわけではなく、「血管にカルシウムが付着した状態」だそうです。この血管に骨ができるということは「血管の石灰化」と呼ばれていて、動脈硬化の人によく見られるそうです。骨のカルシウムが足りないのに、血管にカルシウムが付着するこの現象は「カルシウム・パラドックス」と言うそうですが、おかしな現象です。
なぜ、骨にあるはずのカルシウムが血管で見つかるのかと言うと、血液中のカルシウムは、食後しばらくすると減ってしまいます。そのため、破骨細胞は骨を壊してカルシウムを血液に加えます。逆に余裕のあるときは、骨芽細胞が骨に蓄えます。骨はカルシウムの貯蔵庫でもあるのです。そしてカルシウムと言うとすぐ骨を想像しますが、心臓などの筋肉を動かすのに欠かせない物質でもあるのです。破骨細胞と骨芽細胞が血液中のカルシウムの量を調整しているのです。ところが、年をとると腸からのカルシウムの吸収率が落ち、不足することが多くなり、骨を壊してカルシウムを取り出すのですが、その破骨細胞の働きが活発になりすぎると、やがて骨粗しょう症になってしまうのです。
では、なぜ血管の中にカルシウムがたまってしまうのかと言うと、血管の細胞は「カルシウム不足」の危険信号を受けると、なぜかカルシウムをため込んでしまうのです。血管の細胞と骨芽細胞は、同じ細胞から生まれた兄弟のようなもので、血管の細胞も骨を作る能力をもともと持っているためだと考えられています。血管にカルシウムがたまると、その部分が傷つきやすくなり、血液のカルシウムが不足すると、骨が弱くなるだけでなく、動脈硬化の原因にもなってしまうのです。こんな例もあります。ある女性が犬の散歩中に地面に手を一瞬ついただけで手首を骨折してしまったそうです。しかし、病院で測った骨密度は、同年代では正常の89%。本人も骨には自信があったといいます。それなのになぜ簡単に骨折してしまったのでしょう?最近の研究では、「骨密度で説明できる骨折のリスクは70%程度」といいます。
では、残りの30%はどんな原因なのかと言うと、破骨細胞は、骨を壊すのにおよそ20日間かかります。その後、骨芽細胞が骨を再生させますが、それにはおよそ90日間かかります。この間、骨のつくりかえられている部分は、小さなへこみができているような状態で折れやすくなっているのだそうです。破骨細胞の活動を抑える女性ホルモンが減ると、破骨細胞は歯止めがきかなくなり、骨を作りかえている“工事中”の部分が増え、骨折するリスクが高まるというわけです。骨のつくりかえられている部分が多いかどうかは「骨代謝マーカー」という検査で調べることができるそうで、骨が壊されるときに出る分解物が尿にどれくらい含まれているかで調べるのです。
骨粗鬆症学会が発表した「骨粗鬆症の予防と治療のガイドライン」2006年度版によると「カルシウムの摂取量を増やす、あるいはカルシウム製剤を服用するだけで、骨粗鬆症の治療、すなわち骨量の増加や骨折の予防が期待できるわけではない」とあります。それは私たちが食べたカルシウムは腸から吸収されます。ところが、年をとると吸収率が下がってしまうため、カルシウムだけをとっていても不足しやすくなるのです。そこで骨密度と食習慣の関係を調査した研究者が、骨に良い食材の組み合わせを見つけましたそうです。
野菜、魚、キノコを中心とした食生活の場合、これらをたくさんとっているグループは、あまりとっていないグループと比べて、4%ほど骨密度が高い傾向にありました。野菜にはカルシウムが、魚やキノコにはビタミンDという物質が含まれています。ビタミンDには骨芽細胞の働きを助けたり、腸からのカルシウムの吸収をよくするのです。さらに尿でカルシウムが捨てられなくしたり、筋肉に作用し転倒しにくくするなどの効果があるそうです。
あとは運動と日光浴も効果あるとよく言われることで、運動は、カルシウムが骨につくるのを助けるため、良いと考えられています。日光浴も、皮膚でビタミンDが合成されるため良いのですが、日光の浴びすぎは、熱中症や皮膚がんのリスクを高めるため、1日20分程度までにするのが目安と言われています。最後に、厚生労働省では定めているカルシウム摂取目標量が不足しているため、積極的な摂取を勧めています。ただし、年をとるとカルシウムの吸収量が落ちてしまうため、より吸収を高めるという視点から、ビタミンDをあわせてとることを勧めています。
とここまでは骨粗しょう症に対する今までの対処療法ですが、実は今回、骨粗しょう症の原因になる骨の形成抑制たんぱく質と言うのが発見されたそうです。この発見で骨粗鬆症はもちろん、関節リュウマチなどの新しい治療薬開発に繋がるとしています。今まで破壊細胞の働きを抑える薬剤は開発されていたのですが、骨芽細胞が骨を形成する仕組みについてはよく分かっていなかったのです。東京医科歯科大学の高柳教授らは、免疫の調整に関わるたんぱく質「Sema4D」が骨芽細胞に働きかけ、骨の形成を抑制していることを突き止めたのです。つまり骨ができる場所から骨芽細胞を遠ざけ、新しい骨芽細胞ができるのを妨げていたのです。マウスの実験ではこのたんぱく質の働きを抑えて骨を再生することに成功しています。実用化にはまだ時間がかかるかもしれませんが、これで骨粗しょう症やリュウマチなどが治る可能性が出てきたのです。
最新の骨粗しょう症対策として、50代、60代の女性10人で骨密度の検査をしたところ、骨粗しょう症の方が1人、予備軍が2人見つかりました。しかも、骨粗しょう症の方のX線写真を見ると、なんと動脈にカルシウムがたまっていました。心臓の専門家に尋ねると「血管に骨ができている」と言うそうです。と言っても実際に骨ができるわけではなく、「血管にカルシウムが付着した状態」だそうです。この血管に骨ができるということは「血管の石灰化」と呼ばれていて、動脈硬化の人によく見られるそうです。骨のカルシウムが足りないのに、血管にカルシウムが付着するこの現象は「カルシウム・パラドックス」と言うそうですが、おかしな現象です。
なぜ、骨にあるはずのカルシウムが血管で見つかるのかと言うと、血液中のカルシウムは、食後しばらくすると減ってしまいます。そのため、破骨細胞は骨を壊してカルシウムを血液に加えます。逆に余裕のあるときは、骨芽細胞が骨に蓄えます。骨はカルシウムの貯蔵庫でもあるのです。そしてカルシウムと言うとすぐ骨を想像しますが、心臓などの筋肉を動かすのに欠かせない物質でもあるのです。破骨細胞と骨芽細胞が血液中のカルシウムの量を調整しているのです。ところが、年をとると腸からのカルシウムの吸収率が落ち、不足することが多くなり、骨を壊してカルシウムを取り出すのですが、その破骨細胞の働きが活発になりすぎると、やがて骨粗しょう症になってしまうのです。
では、なぜ血管の中にカルシウムがたまってしまうのかと言うと、血管の細胞は「カルシウム不足」の危険信号を受けると、なぜかカルシウムをため込んでしまうのです。血管の細胞と骨芽細胞は、同じ細胞から生まれた兄弟のようなもので、血管の細胞も骨を作る能力をもともと持っているためだと考えられています。血管にカルシウムがたまると、その部分が傷つきやすくなり、血液のカルシウムが不足すると、骨が弱くなるだけでなく、動脈硬化の原因にもなってしまうのです。こんな例もあります。ある女性が犬の散歩中に地面に手を一瞬ついただけで手首を骨折してしまったそうです。しかし、病院で測った骨密度は、同年代では正常の89%。本人も骨には自信があったといいます。それなのになぜ簡単に骨折してしまったのでしょう?最近の研究では、「骨密度で説明できる骨折のリスクは70%程度」といいます。
では、残りの30%はどんな原因なのかと言うと、破骨細胞は、骨を壊すのにおよそ20日間かかります。その後、骨芽細胞が骨を再生させますが、それにはおよそ90日間かかります。この間、骨のつくりかえられている部分は、小さなへこみができているような状態で折れやすくなっているのだそうです。破骨細胞の活動を抑える女性ホルモンが減ると、破骨細胞は歯止めがきかなくなり、骨を作りかえている“工事中”の部分が増え、骨折するリスクが高まるというわけです。骨のつくりかえられている部分が多いかどうかは「骨代謝マーカー」という検査で調べることができるそうで、骨が壊されるときに出る分解物が尿にどれくらい含まれているかで調べるのです。
骨粗鬆症学会が発表した「骨粗鬆症の予防と治療のガイドライン」2006年度版によると「カルシウムの摂取量を増やす、あるいはカルシウム製剤を服用するだけで、骨粗鬆症の治療、すなわち骨量の増加や骨折の予防が期待できるわけではない」とあります。それは私たちが食べたカルシウムは腸から吸収されます。ところが、年をとると吸収率が下がってしまうため、カルシウムだけをとっていても不足しやすくなるのです。そこで骨密度と食習慣の関係を調査した研究者が、骨に良い食材の組み合わせを見つけましたそうです。
野菜、魚、キノコを中心とした食生活の場合、これらをたくさんとっているグループは、あまりとっていないグループと比べて、4%ほど骨密度が高い傾向にありました。野菜にはカルシウムが、魚やキノコにはビタミンDという物質が含まれています。ビタミンDには骨芽細胞の働きを助けたり、腸からのカルシウムの吸収をよくするのです。さらに尿でカルシウムが捨てられなくしたり、筋肉に作用し転倒しにくくするなどの効果があるそうです。
あとは運動と日光浴も効果あるとよく言われることで、運動は、カルシウムが骨につくるのを助けるため、良いと考えられています。日光浴も、皮膚でビタミンDが合成されるため良いのですが、日光の浴びすぎは、熱中症や皮膚がんのリスクを高めるため、1日20分程度までにするのが目安と言われています。最後に、厚生労働省では定めているカルシウム摂取目標量が不足しているため、積極的な摂取を勧めています。ただし、年をとるとカルシウムの吸収量が落ちてしまうため、より吸収を高めるという視点から、ビタミンDをあわせてとることを勧めています。
とここまでは骨粗しょう症に対する今までの対処療法ですが、実は今回、骨粗しょう症の原因になる骨の形成抑制たんぱく質と言うのが発見されたそうです。この発見で骨粗鬆症はもちろん、関節リュウマチなどの新しい治療薬開発に繋がるとしています。今まで破壊細胞の働きを抑える薬剤は開発されていたのですが、骨芽細胞が骨を形成する仕組みについてはよく分かっていなかったのです。東京医科歯科大学の高柳教授らは、免疫の調整に関わるたんぱく質「Sema4D」が骨芽細胞に働きかけ、骨の形成を抑制していることを突き止めたのです。つまり骨ができる場所から骨芽細胞を遠ざけ、新しい骨芽細胞ができるのを妨げていたのです。マウスの実験ではこのたんぱく質の働きを抑えて骨を再生することに成功しています。実用化にはまだ時間がかかるかもしれませんが、これで骨粗しょう症やリュウマチなどが治る可能性が出てきたのです。