★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇シュワルツコップの魅力~珠玉の名歌集~

2021-09-13 09:39:25 | 歌曲(女声)


~シュワルツコップの魅力~珠玉の名歌集~~

モーツアルト:春のあこがれ/すみれ
シューベルト:野ばら/糸を紡ぐグレートヒェン/水の上で歌う/鱒
メンデルスゾーン:歌の翼に
シューマン:献呈(「ミルテの花」より)
ドヴォルザーク:わが母の教えたまいし歌
チャイコフスキー:ただ憧れを知るもののみ
R・シュトラウス:子守歌
マルティーニ:愛の喜び
アーン:わが歌に翼ありせば
グリーク:きみを愛す
イギリス民謡:ダニー・ボーイ

ソプラノ:エリザベート・シュワルツコップ

ピアノ:ジェラルド・ムーア/ワルター・ギーゼキング/エドウィン・フィッシャー

LP:東芝音楽工業(EMI Angel) EAA-109

 エリザベート・シュワルツコップ(1915年―2006年)は、ドイツの名ソプラノ。その歌声はあくまで気品があり、透明で限りなく美しく、私にとっては、未だにソプラノというとシュワルツコップ名が浮かぶ。このLPレコードは、「シュワルツコップの魅力~珠玉の名歌集~」とタイトルが付けられている通り、誰もが知っている珠玉の名曲が集められている。そんな歌をシュワルツコップが歌うと、一段と深みが出てきて、まるで宝石箱からこぼれ出た宝石が光り輝くような感じを受ける。これは歌曲を愛するものにとっての永遠の名盤である。シュヴァルツコップは、プロイセン王国ポーゼン州(現ポーランド、ヴィエルコポルスカ県)のヤロチンで生まれた。ベルリン音楽大学で学ぶ。最初はコロラトゥーラ・ソプラノであったが、後にソプラノ・リリコに転向。1938年、デビューを果たした。1943年ウィーン国立歌劇場と契約し、コロラトゥーラ・ソプラノとして活動を展開する。第2次世界大戦後、バイロイト音楽祭やザルツブルク音楽祭に出演。その後、イギリスのコヴェント・ガーデン王立歌劇場、ミラノ・スカラ座に、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場にデビューした。1992年、イギリス女王エリザベス2世は、シュヴァルツコップにナイト爵に相当し、女性に与えられる称号であるDBEを授与した。モーツアルト:「春のあこがれ」は、モーツァルトが生涯の最後の年に、ある子供用の歌曲集のために書いた曲のひとつ。この曲を書いた頃のモーツァルトは、悲惨な窮迫のどん底にあったが、この楽しそうな童謡には、何の陰りもない。シューベルト:「野ばら」は、シューベルトが18歳の時に書いた多数のゲーテ歌曲のひとつで、可憐な旋律と単純な伴奏を持った民謡風の曲。メンデルスゾーン:「歌の翼に」は、ハイネの詩に作曲したもので、はるかな東洋に寄せる詩人のあこがれに満ちた夢想が、豊饒なメロディーと見事な伴奏によって描き出されている。シューマン:「献呈」は、歌曲集「ミルテの花」の巻頭を飾る、愛する花嫁クララに献呈された曲で、リュッケルトの詩による情熱的な恋人への賛歌であり、ロマンチックな恋愛感情の典型的な表現の曲。ドヴォルザーク:「わが母の教えたまいし歌」は、ボヘミアの詩人アドルフ・ヘイドゥークの詩による歌曲集「ジプシーの歌」の第4曲で、深い情感をこめて、人間的な共感を誘わずにはおかない。(LPC)

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◇クラシック音楽LP◇カラヤン指揮ベルリン・フィル、ミレッラ・フレーニなどによるプッチーニ:歌劇「ラ・ボエーム」

2021-09-09 09:37:13 | オペラ


プッチーニ:歌劇「ラ・ボエーム」

指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン

管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

配役:ミミ       ミレッラ・フレーニ(ソプラノ)
   ロドルフォ     ルチアーノ・パヴァロッティ(テノール)
   ムゼッタ     エリザベス・ハーウッド(ソプラノ)
   マルチェルロ   ローランド・パネライ(バリトン)
   コルリーネ     ニコライ・ギャウロフ(バス)
   ショナール     ジャンニ・マッフェオ(バス)
   ブノア      ミシェル・セネシャル(テノール)
   アルチンドロ   ミシェル・セネシャル(テノール)
   パルピニョール  ゲールノート・ピエシュ(テノール)
   税関の役人    ハンス・ディートリッヒ・ポール(バリトン)
   巡査部長      ハンス・ディーター・アッペルト(バス)

合唱指揮:ワルター・ハーゲン・グロル

合唱:ベルリン・ドイツ歌劇場合唱団
   シェーネベルク少年合唱団

LP:LONDON TLR-7010 SLC-7191~2

 プッチーニ:歌劇「ラ・ボエーム」のボエームとは、ボヘミアン(ボヘミア人)を意味する言葉であり、ジプシー(ロマ)出身の芸術家たちがパリにやってきて、何ものにもとらわれない生活を送る情景を描いた、このオペラに登場する人達のこと。原作は、フランスの作家アンリー・ミュルジェの23章の短篇からなる小説「ボヘミアンたちの生活情景」で、1851年に出版された。これは、パリのラテン区に住む若人気質を興味深く綴ったもので、登場人物の四銃士と呼ばれた4人の男たちを含め実在の人物であったらしい。初演は、その時29歳のトスカニーニが指揮して、トリノのレッジョ劇場で行われ、結果は、まずまずの成功であった。その後、イギリスでの上演が好評で、ヨーロッパ各地で上演され、1900年にはメトロポリタン歌劇場で上演され賞賛された。第1幕は、クリスマス・イヴのパリのカルチエ・ラタンにあるボヘミアン仲間が暮らす屋根裏部屋。ボヘミアンの男たちの会話のやりとりや家主の追放、3人の仲間の退場から気分が一転し、ミミの登場で甘美な旋律によるロドルフォとの情緒豊かな愛の場面が展開する。第2幕は、クリスマスを祝う群集で賑わう通りで、物売りが口々に声を張り上げている。ダンフェール門の市外との関税所前。この幕は、スぺクタルトとアンサンブルの饗宴で、ムゼッタと演出家の見せ場となっている。第3幕は、翌年の2月、小雪模様のどんよりとした寒そうな朝。別れる気の二人がいたわりあって帰り、そんな気のない二人が喧嘩別れになる場面。ミミとロドルフォの甘美な重唱と、マルチェルロとムゼッタの罵り合う重唱、それが一つになる四重唱が有名。第4幕は、数ヶ月後、再び屋根裏部屋。ムゼッタは金持ちの所で世話になっていたミミが、死ぬ前に一目ロドルフォに会いたいというので連れて来たことを三人の仲間に語る。ショナールがふとミミを見ると彼女はすでに息絶えていた。そっと皆に知らせると、ロドルフォは周りのただならぬ様子に事態を察し、ミミの亡骸にすがりついて泣き臥す。このLPレコードで指揮をしているのがヘルベルト・フォン・カラヤン、管弦楽がベルリン・フィル。カラヤンの高い統率力とベルリン・フィルの完璧な演奏能力を存分が発揮され、数ある「ラ・ボエーム」の録音の中でも、今でも一際輝いている。歌手陣は、ミミ役のミレッラ・フレーニ(1935年―2020年)をはじめとして、いずれも情感を持って、それぞれの配役を見事に歌い上げている。録音状態も良好。(LPC)

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◇クラシック音楽LP◇マタチッチ指揮フィルハーモニア管弦楽団、シュワルツコップなどによるレハール:喜歌劇「メリー・ウィドウ」

2021-09-06 09:43:00 | オペラ


レハール:喜歌劇「メリー・ウィドウ」(全曲)

指揮:ロヴロ・フォン・マタチッチ

管弦楽:フィルハーモニア管弦楽団

ツェータ男爵:ヨーゼフ・クナップ(バリトン)
ヴァランシエンヌ:ハンニー・シュテフェック(ソプラノ)
ダニロヴィッチ伯爵:エバーハルト・ヴェヒター(バリトン)
ハンナ・グラヴァリ:エリザベート・シュワルツコップ(ソプラノ)
カミーニュ・ロジョン:ニコライ・ゲッダ(テノール)
カスカーダ子爵:クルト・エキールス(テノール)
サン・ブリオシュ:ハンス・シュトローバウアー(テノール)
ニエグシュ:フランツ・ベーハイム(テノール)

<グリゼット(ホステス)達>

ロロ:レスリー・ウッド
ドド:エイリッド・マクナップ
ジュジュ:クリスティン・パーカー
フルフル:ノリーン・ウィレット
クロクロ:ドリーン・マーレイ
マルゴ:ローズマリー・フィリップス

合唱指揮:ライホルト・シュミット

合唱:フィルハーモニア合唱団

LP:東芝EMI EAC-47211~12

 レハール:喜歌劇「メリー・ウィドウ」の粗筋は次の通り。第1幕は、20世紀初頭、パリにあるポンテヴェドロ国(仮想の国)公使館の客間。公使のツェータ伯爵は、ポンテヴェドロ国の君主の誕生日を祝うためパーティーを開いた。この劇の主人公ハンナは、巨万の富を持つ老銀行家と結婚したが、結婚8日にして夫が亡くなり、彼女は、その遺産を受け継ぐことになった。そして、ハンナはパリの生活を楽しむために来ている。パーティーでは、ハンナは男たちの人気を一身に受けたのは、その美貌だけでないことは明らかだった。ツェータ公使は「ハンナは決してパリ男と結婚してはならないのだ。2000万フランが彼女と共にフランスのものになってしまってはならない。財産はポンテヴェドロ国のものとして残されねばならぬ」と考える。そして、公使館秘書のダニロ伯爵と結婚させることによって、これを実現させようと謀る。ところが、ダニロ当人は、キャバレー・マキシムでホステスに囲まれて酔いつぶれている始末。実は以前ダニロとハンナは、愛し合っていたが、身分の違いで結婚できなかったのだ。パーティー会場に現れたダニロに向かってツェータ公使は、ハンナとの結婚話を切り出すが、ダニロは「断然断ります」と激昂する。その後、ハンナがダニロを踊りの相手に選ぶ。ダニロは、その権利を1万フランで売ろうと男たちに声をかけるが、返事はない。第2幕は、ハンナの別宅。ハンナが昨日のお礼にと招待したのであった。ここでハンナは、ダニロが自分を避けているとなじる。ハンナはロジョンと婚約したと話した途端、ショックを受けたダニロは、例え話に託したワルツを歌う。これを聴いてハンナは、ダニロの怒りの中に彼の愛を認める。第3幕は、ハンナの私邸。キャバレー・マキシムを模倣してパーティー会場をつくり、楽団やグリゼット(ホステス)達を呼んできた。この時、ダニロは、ロジョンとの結婚を止めろと告げる。そして二人は、踊りながら、遂に愛を告白する。このLPレコードの演奏は、ロヴロ・フォン・マタチッチ(1899年―1985年)指揮フィルハーモニア管弦楽団、ソプラノ:エリザベート・シュワルツコップ(1915年―2006年)、バリトン:エバーハルト・ヴェヒター(1929年―1992年)、テノール:ニコライ・ゲッダ(1925年―2017年)などによるもので、典雅なワルツにのって流れるメロディーは、ウィーンの良き時代を彷彿させ、現在に至るまで、これ以上の名演は望めそうにもない名盤に仕上がっている。それに加えて、録音の質も最良の状態であるのが嬉しい限り。(LPC)
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◇クラシック音楽LP◇ワルター・ギーゼキングのモーツァルト:ピアノ独奏曲全集(全63曲)

2021-09-02 09:46:28 | 器楽曲(ピアノ)


~モーツァルト:ピアノ独奏曲全集(全63曲)~

メヌエットとトリオ   ト長調   K1
メヌエット   へ長調    K2
アレクロ 変口長調   K3
メヌエット へ長調    K4
メヌエット   へ長調    K5
グラーフのオランダ歌曲による8つの変奏曲   ト長調    K24
ウィレム・ヴァン・ナッサウによるフつの変奏曲   二長調   K25
アレグレットの創作主題による6つの変奏曲   へ長調   K54
メヌエット   二長調    K94
サリエリの主題による6つの変奏曲   ト長調    K180
ヨハン・C・フィッシャーの主題による12の変奏曲   ハ長調   K179
ピアノソナタ第1番   ハ長調    K279
ピアノソナタ第2番    へ長調     K280
ピアノソナタ第3番    変口長調  K280
ピアノソナタ第4番    変ホ長調  K282
ピアノソナタ第5番    ト長調     K283
ソナタ楽章(アレグロ)   ト短調       K312
ピアノソナタ第6番   二長調    K284
ピアノソナタ第7番   ハ長調    K309
ピアノソナタ第9番   二長調    K311
ピアノソナタ第8番   イ短調    K310
「私はランドール」による12の変奏曲   変ホ長調   K354
カプリチオ   ハ長調    K395
「何から話そうかしらお母さん」による12の変奏曲   ハ長調   K265
ピアノソナタ第IO番   ハ長調   K330
ピアノソナタ第11番   イ長調   K331
ピアノソナタ第12番   ヘ長調   K3312
「楽しいフランソワーズ」による12の変奏曲   変ホ長調   K353
「リゾンは森で眠っていた」による9つの変奏曲   ハ長調   K264
ピアノソナタ第13番   変口長調   K333
8つのメヌエットとトリオ   K315a
グレトリーのマーチによる8つの変奏曲   へ長調   K352
ソナタ楽章(アレグロ)   変口長調   K400
幻想曲とフーガ   ハ長調   K394
フーガ   ト短調   K401
幻想曲   ハ短調   K396
幻想曲   二短調   K397
ヘンデルの手法による組曲   K399
パイジェルロの主題による6つの変奏曲   へ長調   K398
小さな葬送行進曲   ハ短調   K435a
サルティの主題による8つの変奏曲   イ長調   K460
グルックの主題によるIOの変奏曲   ト長調   K455
幻想曲   ハ短調   K475
ピアノソナタ第14番   ハ短調  K457
ロンド   二長調   K485
ソナタ楽章とメヌエット   変口長調   K追加136
アレグレットの主題による12の変奏曲   変口長調   K500
トリオを持つ6つのドイツ舞曲   K509
ロンド   イ短調   K511
ピアノソナタ第18番   へ長調   K533
ロンド   へ長調   K494
アダージョ   口短調   K540
ピアノソナタ第15番   ハ長調   K545
ピアノソナタ第19番   へ長調   K135&138a
ピアノソナタ第16番   変口長調   K570
デュポールのメヌエットによる9つの変奏曲   二長調   K573
小さなジーグ   ト長調   K574
ピアノソナタ第17番   二長調   K576
アンダンティーノ   変ホ長調   K236
メヌエット   二長調   K.355
グラス・ハーモニカのためのアダージョ   ハ長調   K356
「女はたいしたもんだ」による8つの変奏曲   ヘ長調   K613
ロンド   ヘ長調   K616

ピアノ:ワルター・ギーゼキング

LP:東芝EMI EAC‐30264~74

 これは、ワルター・ギーゼキング(1895年―1956年)が、モーツァルトが生涯で作曲した全63曲のピアノ独奏曲を、合計11枚のLPレコードに収録した全集だ。当時としては録音史上初の画期的なレコード全集であった。モーツァルトは、18世紀の後半に生きていたわけであるが、この頃になると、鍵盤楽器は、それまでの主役であったチェンバロからピアノへと移行しつつあり、その他の楽器も現在我々が目にする楽器とほぼ同じものが普及しつつあった。モーツァルトの時代の前にはピアノは普及しておらず、このためピアノのための作品は残されておらず、モーツァルト時代以降のピアノ作品が遺されているわけである。モーツァルトも6歳にして一人前のピアニストとなり、たちまちモーツァルトという名前は神童ピアニストとして、ヨーロッパ中に知れ渡ることになる。モーツァルトはその頃、「作曲もするピアニスト」という位置づけにあった。モーツァルトの書いたピアノ音楽は、ピアノ協奏曲、ピアノ三重奏曲やピアノ四重奏曲などの室内楽、それにピアノ独奏曲の3つに分類される。このうちピアノ協奏曲は、当時は素人ではほとんど演奏不可能な作品で、このためモーツァルトが生きていた時にはほとんど出版されなかったようだ。ソナタ、幻想曲、メヌエット、アレグロ、変奏曲などのピアノ独奏曲は、当時、上流階級の子女のたしなみとして楽譜が出版された。つまり、モーツァルトのピアノ独奏曲は、ピアノ協奏曲に見られる高い芸術性を有した作品とは異なり、素人が弾きやすい作品が主流を占めている。このため、モーツァルトのピアノ独奏曲は、素人の演奏家向けの作品が主流を占めているが、そのいずれもが卓越した表現力を要求される作品に仕上がっている。このためプロのピアニストだからといって、誰もがモーツァルトの世界を表現できるわけでない。つまり、“モーツァルト弾き”と追われる、プロ中のプロの弾き手によって初めてそれらの作品の真価が引き出されるのである。その一人がワルター・ギーゼキングである。ギーゼキングはよく“新即物主義”のピアニストと言われる。これは、ピアニストの私情を極力排し、楽譜に忠実に演奏することを表す言葉。だからといってギーゼキングの演奏は、堅苦しいものではなく、心のこもった充実した演奏内容となっている。このモーツァルト:ピアノ独奏曲全集での演奏も、楽譜に忠実で、きちっとまとめている。全体を通してロココ調を思わせる演奏で、清々しい感覚が魅力的。一世を風靡した“モーツァルト弾き”ギーゼキングの貴重な録音だ。(LPC)

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