アルビノーニ:オーボエ協奏曲Op.9の2、11、5、8
オーボエ:ハインツ・ホリガー
ハープシコード:マリア・テレサ・ガラッティ
管弦楽:イ・ムジチ合奏団
LP:日本フォノグラム(PHILIPS) SFX-7964
オーケストラが演奏の前、音合わせ(チューニング)をするとき、オーボエが最初に吹き、それに続いて第一ヴァイオリン、さらに他の楽器が続く。そんなオーボエが主役を演じる協奏曲の中でも白眉とも言えるのが、一連のアルビノーニのオーボエ協奏曲だ。このLPの最初の曲である作品9の2を聴くと、流麗この上ないホリガーのオーボエの音色に忽ち引きつけられ、聴き惚れる。そんな魅力的なオーボエの音こそLPレコードで聴いてほしいものだ。その人間的な音が目の前に迫ってくるようだ。アルビノーニ(1671年―1750年)は、ヴィヴァルディより7年早く、ヴェネチアで生まれた。育った家が裕福であったため、当初は音楽で生計を立てる必要はなかったようである。しかし、その後、職業的なヴァイオリニストとして生計を立てるようになる。アルビノーニは、多作家で、約50曲のオペラをはじめ、数多くのカンタータ、アリアを書き残しており、当時は、オペラ作曲家として、その名が通っていたという。しかし、音楽史上では、器楽曲の作曲家としての方が大きな役割を演じ、ヴィヴァルディの作風にも大きな影響を与えたほど。作品9の「五声のためのコンチェルト」は、1722年に出版された最後の作品集。ソロ楽器と弦楽4部のコンチェルト12曲からなる。全体は、ソロ楽器として、①ヴァイオリンによるもの②オーボエによるもの③2本のオーボエによるもの―の4曲づつ3つのグループに分けられる。このレコードには、そのうち、オーボエのソロ・コンチェルトの4曲が収められている。アルビノーニは、管楽器の中では、特にオーボエに興味があったらしく、生前出版された42曲のコンチェルトのうち、16曲にオーボエを用いている。このレコードでオーボエを演奏しているのは、スイス出身のオーボエ奏者・指揮者、作曲家であるハインツ・ホリガー(1939年生まれ)である。ベルン音楽院、バーゼル音楽院、パリ音楽院で学ぶ。オーボエのソリストとしては、1959年ジュネーヴ国際音楽コンクール優勝、1961年ミュンヘン国際音楽コンクール優勝の受賞歴を誇り、国際的に名声あるオーボエ演奏家である。生前カザルスは、ホリガーを「偉大な芸術家、信じられない程のヴィルトゥオーゾ」と絶賛したという。ホリガーは、オーボエの演奏技法と流麗な響きの可能性を切り開き、18世紀において重要な役割を演じていたオーボエを、再び現代に蘇らせた、偉大なオーボエ奏者である。(LPC)