★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇小澤征爾指揮パリ管弦楽団のチャイコフスキー:交響曲第4番

2021-12-27 09:47:20 | 交響曲(チャイコフスキー)


チャイコフスキー:交響曲第4番

指揮:小澤征爾

管弦楽:パリ管弦楽団

録音:1970年10月22日~23日、パリ

LP:東芝EMI EAC‐30302

 指揮者の小澤征爾は、トロント交響楽団の首席指揮者を皮切りに、サンフランシスコ交響楽団音楽監督、ボストン交響楽団音楽監督、そして2002年にクラウディオ・アバドからバトンタッチしてウィーン国立歌劇場音楽監督に就任し、同監督を2010年まで務め挙げた。実は、今回のLPレコードのパリ管弦楽団の音楽監督には一度も就任してはいないのである。しかし、ショルティの次にパリ管弦楽団の音楽監督を選ぼうとした時の有力候補の一人に小澤征爾が挙がっていたという話があったほど、互いにその関係は緊密なものであった。それは、パリ管弦楽団の持つ資質と小澤のそれとがかなりの近しかったことが原因になっていた。それは、このLPレコードに遺された録音が物語っている。繊細で色彩感覚に富んだ演奏は、ロシア人が演奏するのとは大分隔たりがあるが、こんなチャイコフスキーがあってもいいという強い説得力を持った演奏を繰り広げている。小澤の指揮ぶりで感心すること一つは、洗練されたリズム感が全体を覆っていることであり、これこそパリ管弦楽団の真骨頂が存分に発揮できる土壌なのだ。チャイコフスキーは、37歳の時、結婚の失敗から入水自殺を図ったが、未遂に終わる。これ以降、チャイコフスキーは、今日、傑作と目されている名曲の数々を作曲するのである。交響曲第4番は、この人生上の一大事件の最中に作曲され、結果的には中期を代表する作品となった。1876年、チャイコフスキーは、未知の女性から手紙を受け取った。裕福な地主のナジーデダ・フィラレトーヴナ・フォン・メック夫人からであった。メック夫人は、チャイコフスキーの才能を高く評価し資金援助を申し入れたが、二人は手紙のやり取りのみで、一度も会うことはなかったという。これによりチャイコフスキーは、教授職を辞し、歌劇「エフゲニー・オネーギン」と、この第4交響曲の作曲に没頭することになる。1878年1月に曲は完成し、初演は成功を収めた。草稿には「わが最愛の友に」と書かれており、フォン・メック夫人に捧げられた曲となった。チャイコフスキーの第4番~第6番の3つの交響曲の中では、比較的明るい曲調の曲で、現在でも根強い人気を誇っている。小澤の指揮は、決して押し付けがましくなく、チャイコフスキーの世界を思う存分リスナーに印象づけることに成功している。特にパリ管弦楽団の持つ色彩豊かな演奏能力を最大限発揮させた手腕は評価できよう。数あるチャイコフスキーの交響曲第4番の録音でも、豊饒な色彩感覚あふれる1枚となった。(LPC)


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ◇クラシック音楽LP◇若き日の... | トップ | ◇クラシック音楽LP◇若き日の... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

交響曲(チャイコフスキー)」カテゴリの最新記事