★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィルのチャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」

2022-04-25 09:47:23 | 交響曲(チャイコフスキー)


チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」

指揮:エフゲニー・ムラヴィンスキー

管弦楽:レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団

録音:1960年11月7日~9日、ウィーン、ムジークフェライン・ザール

LP:ポリドール(ドイツグラモフォン) 2535 237

 指揮者のエフゲニー・ムラヴィンスキー(1903年―1988年)は、1924年レニングラード音楽院に入り、作曲と指揮を学ぶ。1931年レニングラード音楽院を卒業し、マリインスキー劇場(当時の名称はレニングラード・バレエ・アカデミー・オペラ劇場)で指揮者デビューを果たし、以後1938年までこの職にとどまる。1934年からレニングラード・フィルハーモニー管弦楽団で定期的に客演指揮活動を開始する。1937年ショスタコーヴィチの第5交響曲を初演。1938年「全ソ指揮者コンクール」に優勝した後、すぐにレニングラード・フィルハーモニー管弦楽団の常任指揮者に就任。以後、50年間にわたりレニングラード・フィルに君臨し、その名声を世界に轟かすことになる。スターリン賞(1946年)、人民芸術家(1954年)、レーニン賞(1961年)、社会主義労働英雄(1973年)と、その受賞歴を見れば旧ソ連の英雄であったことが自ずと分る。日本へも4回来ている。そのムラヴィンスキーとレニングラード・フィルが、全盛時代にオーストリアに渡り、ウィーン楽友協会ホールで録音したのが、歴史的録音として名高い、このLPレコードなのだ。チャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」は、19世紀後半の代表的交響曲の一つとして高く評価され、現在でも最も人気のある交響曲の一つに数えられている。チャイコフスキー自身も「この曲は、私の全ての作品の中で最高の出来栄えだ」と語るほどの自信作だった。しかし、「悲愴」の初演のわずか9日後、チャイコフスキーはコレラに加え肺水腫が原因で急死し、この曲は彼の最後の大作となった。このLPレコードでのムラヴィンスキーの指揮ぶりは、厳格な上にも厳格を極めていると言ってもいいくらい禁欲的な精神に貫かれている。ムラヴィンスキーの写真で見るしかつめらしい顔つきは、正に演奏そのものの反映と言ってもいいほど。このLPレコードは、そんなムラヴィンスキーが、自身の特徴を遺憾なく発揮した白眉の1枚なのだ。そこには、甘い感傷などの入り込む余地など微塵もない。そして壮大な建築物を一部の隙もなくつくり上げるような、雄大な構成力が厳然としてそこには存在している。リスナーが気楽な気持ちで「悲愴交響曲」を聴こうとすると、ムラヴィンスキーから拒否されかねないのが、この録音なのである。かといってコチコチのチャイコフスキーとは異なり、あたかも一遍の小説を読むような、ドラマチックな展開がその背後には確かに存在しているんがムラヴィンスキーの魅力なのである。(LPC)


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