★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇カラヤン指揮ベルリン・フィルのチャイコフスキー:交響曲第5番

2020-09-17 09:40:23 | 交響曲(チャイコフスキー)

チャイコフスキー:交響曲第5番

指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン

管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

録音:1965年9月22日、24日、27日、11月8日、ベルリン、イエス・キリスト教会

LP:ポリドール(ドイツグラモフォン) SE 7812

 このLPレコードに収録されている交響曲第5番は、チャイコフスキーが1888年に作曲した作品。交響曲第4番と「マンフレッド交響曲」を作曲した後、チャイコフスキーは交響曲の作曲からは遠のいていた。しかし、その後、ヨーロッパに演奏旅行したことを契機として、再び交響曲への作曲に情熱が高まり、1888年5月~8月にかけて作曲されたのが、この交響曲第5番である。初演における評論家の評価は低かったようであるが、徐々に人気が高まり、今では交響曲第6番「悲愴」に次ぐ人気作品となっている。古典的な4楽章形式の交響曲であるが、第3楽章にワルツが取り入れられているのがこの曲を特徴付けている。この交響曲は、如何にもチャイコフスキーらしい、北国を思わせる物悲しい雰囲気の中に、美しいメロディーが散りばめられ、いつ聴いても飽きない、魅力ある作品に仕上がっている。このLPレコードで演奏しているのは、ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮のベルリン・フィルである。このコンビは、最後は対立関係に陥るが、カラヤン在任中にベルリン・フィルの力量が格段に向上したことは紛れもない事実。そんな名コンビの演奏が残した録音の中でも、私が好きなのは、このチャイコフスキー:交響曲第5番とヘンデル:合奏協奏曲作品6である。両方ともカラヤンの美学がはっきりと表現され、寸分の曖昧さもない。ヘンデル:合奏協奏曲作品6が「静」の美学とするなら、このチャイコフスキー:交響曲第5番には、カラヤンの「動」の美学が息づいている。チャイコフスキー:交響曲第5番は、一般にロシアの郷土色を前面に押し出したような演奏をする指揮者が多いが、カラヤンの場合は、あくまで曲そのものを対象とし、それ以外の付随的な要素は切り捨てる。ある意味では無国籍的な印象を受けるが、その分交響曲としての壮大な姿が浮き彫りとなり、リスナーに強く訴えるものがあるのだ。リスナーは、聴き終わった後、何か壮大な建築物を下から見上げた爽快さを味わうことになる。畳み掛けるようにベルリン・フィルをリードし、それに対してベルリン・フィルの団員達もこれに応じ、そのやり取りは、録音を通しても伝わってくるのだから凄いの一言に尽きる。もうこうなると、ロシア的雰囲気とかは二の次になって、リスナーは、カラヤンとベルリン・フィルが繰り広げる音の饗宴に身を投げ出すだけとなる。これほど歯切れよく、深みのある演奏は、そう聴かれるものではない。このコンビが繰り広げる、集中力の高さに加えた、奥行きの深い表現力には、誰もが一目を置かざるを得まい。(LPC)


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ◇クラシック音楽LP◇デムス&... | トップ | ◇クラシック音楽LP◇オイス... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

交響曲(チャイコフスキー)」カテゴリの最新記事