★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇ヨゼフ・カイルベルト指揮ベルリン・フィルのブラームス:交響曲第2番/大学祝典序曲

2020-07-02 09:36:17 | 交響曲(ブラームス)

ブラームス:交響曲第2番
      大学祝典序曲

指揮:ヨゼフ・カイルベルト

管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(交響曲第2番)
    バンベルク交響楽団(大学祝典序曲)

発売:1978年

LP:キングレコード GT 9174
 
 このLPレコードは、名指揮者ヨゼフ・カイルベルト(1908年―1968年)がベルリン・フィルを指揮したブラームス:交響曲第2番とバンベルク交響楽団を指揮したブラームス:大学祝典序曲の2曲が収められている。このLPレコードのライナーノートに音楽学者の渡辺 護氏は次のように書いている。「1968年の夏、筆者はイタリアからミュンヘンに旅行をした。7月22日ミュンヘンの宿に着いて、新聞を開いて見ると、そこにカイルベルトの突然の死が大きく報ぜられていたのである。『トリスタンとイゾルデ』や『サロメ』を見ることを楽しみに来たのだが、それも不可能になった。カイルベルトは7月20日、国立歌劇場で『トリスタン』を指揮している最中、突然大きな音を立てて倒れ、そのまま他界したのである。ベーム、カラヤンと共にドイツ指揮界の最巨峰であったカイルベルトはその時まだ60歳。今後の活躍がまだまだ大きく期待できる時であった。彼は極めてドイツ的な指揮者で、表面的な美しさや情緒におぼれることなく、確固たる構築性やしっかりしたリズム感に優れていた。レパートリーは広くないが、ドイツ音楽にかけては、他の追随を許さない」。ブラームスの交響曲は、クラシック音楽に中でも最も多くの指揮者が録音している曲であろう。そんな数多くあるブラームス:交響曲第2番の録音の中でも、この録音は、特筆ものの録音であり、私としては、これまでのあらゆる録音の中で、ベスト1かベスト2の録音に挙げたいほど。ブラームス:交響曲第2番は、他の3曲とは異なり、かなりロマンの香りが漂う作品だ。つまり、やたらに力ずくで指揮してもダメだし、逆に平穏に指揮しても、ただつまらなく聴こえてしまう。ある意味で、指揮者の力量がはっきりと表れる交響曲である。ここでのカイルベルトの指揮は、流れるような自在な表現力のある指揮ぶりを存分に発揮する。自然と湧き起ってくるようなオーケストラの響きは、最後までリスナーを引きつけて離さない。また、ベルリン・フィルの奏でる音は、何という味わいの深さだろう。そんなベルリン・フィルの音をカイルベルトは自在に操り、リズム感たっぷりに表現する。この演奏を聴いていると、思わずこんこんと湧き出す泉を思い出す。何もかもが、流れるように、自然なたたずまいの中にある。それに加え、遠近法を駆使したような構成美が加わる。ブラームスの“田園交響曲”と言われる所以がよく分かる演奏だ。この録音はCDでも入手できるようなので、機会があれば是非一度聴いてみてほしい。(LPC)


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ◇クラシック音楽LP◇ワレー... | トップ | ◇クラシック音楽LP◇バリリ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

交響曲(ブラームス)」カテゴリの最新記事