★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇名メゾ・ソプラノ クリスタ・ルードヴィッヒのブラームス/ワーグナー/マーラー歌曲集

2024-06-24 09:55:40 | 歌曲(女声)

ブラームス:「アルト・ラプソディー」

ワーグナー:「ヴェーゼンドンクの五つの詩」                       
         
            天使           
            とまれ!           
            温室で           
            苦悩           
            夢

マーラー:「五つの歌」                     

            わたしはこの世に忘れられて           
            真夜中に           
            うき世の暮らし           
            ほのかな香り           
            美しいトランペットの鳴り渡るところ

メゾ・ソプラノ:クリスタ・ルートヴィッヒ

指揮:オットー・クレンペラー

管弦楽:フィルハーモニア管弦楽団

合唱:フィルハーモニア合唱団(ブラームス)

録音:1962年3月21日、23日(ブラームス)     
   1962年3月22日、23日(ワーグナー)     
   1962年2月17日、18日(マーラー)

LP:東芝EMI EAC‐40118

 ブラームスの通常言われる「アルト・ラプソディー」の正式な名称は「アルトと男声合唱とオーケストラのためのラプソディー」であり、ブラームス36歳の作品。テキストは、ゲーテの詩「冬のハルツの旅」から取った。この詩は全部で11節からなるが、この中からブラームスは第5節~第7節目を用いた。この詩は、全体が厭世観に満ちたものであり、その中でも悲歌とも言える部分を採用したのは、当時、ブラームス自身が失恋から来る、厭世観に打ちのめされていたからとも言われる。そのような曲であり、全体は暗く、陰鬱な気分で覆われている。この曲を歌い、その真価をリスナーに伝えるには、歌手自体に力がないと到底不可能なことになってしまう。この点、クリスタ・ルートヴィッヒ(1928年―2021年)は、メゾ・ソプラノの声の特質を存分に発揮し、深みのある、荒涼とした神経描写を的確に表現しており、見事な仕上がりを見せる。さらに、これを支える指揮者のオットー・クレンペラー(1885年―1973年)の棒捌きが誠に見事であり、曲全体の効果を何倍にも高めている。全体は3つの部分に分けられるが、第3部ではそれまでの陰鬱な気分を払い取るかのような、リスタ・ルートヴィッヒの滑らかで、力強い明るい歌唱力に、暫し聴き惚れてしまう。次のワーグナー:「ヴェーゼンドンクの五つの詩」は、マチルデ・ヴェーゼンドンクの詩を基にした作品で、1857年~58年に作曲された。この曲の第3曲と第5曲に“トリスタンとイゾルデのための習作”と書かれている通り、楽劇「トリスタンとイゾルデ」が書かれた時期と重なる。また、ワーグナーがマチルデ・ヴェーゼンドンク夫人との恋愛に溺れた時期でもあり、精神の異常な高ぶりが、この作品を生んだとも考えられる。そんな甘美な感情をクリスタ・ルートヴィッヒは、静かに、しかも押し殺したような表現で歌い挙げており、ワーグナーの官能的な世界を見事に表現し切っている。ここでもオットー・クレンペラー指揮フィルハーモニア管弦楽団は、抜群の演出効果を挙げている。最後のマーラー:「五つの歌」は、「リュッケルトによる五つの歌」と「子供のふしぎな角笛」からの抜粋された曲。この時期(1902年)には、同じくリュッケルトの詩による歌曲集「亡き子をしのぶ歌」がつくられている。ここでもクリスタ・ルートヴィッヒの歌声は、マーラー独特の甘美で夢幻的な世界へとリスナーを誘ってくれる。(LPC)


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