★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇名ソプラノ エリー・アーメリングが歌うシューベルト・リート・リサイタル

2022-06-20 09:54:54 | 歌曲(女声)


~シューベルト・リート・リサイタル~

シューベルト:夕映えの中で D.799
       星 op.96-1 D.939
       夜と夢 op.43-2 D.827
       愛らしい星 D.861
       ロザムンデのロマンス op.26 D.792,3b
       孤独な男 op.41 D.800
       子守歌 op.24-2 D.527
       シルヴィアに op.106-4 D.891
       少女 D.652
       愛の歌 D.429
       愛は裏切った op.23-1 D.751
       リュートに寄せて op.81-2 D.905
       花の便り D.622
       男というのは悪者よ! op.95-3 D.866
       至福 D.433

ソプラノ:エリー・アーメリング

ピアノ:ダルトン・ボールドウィン

録音:1973年8月21日~22日、アムステルダム、コンセルトヘボウ

LP:日本フォノグラム(フィリップスレコード) 18PC‐84(6500 704)

 シューベルトのリートを歌う、このLPレコードのエリー・アーメリングの透明度の高い、美しい歌声を最初に聴いた時、私はそのあまりの美しさに一瞬言葉を失ってしまった程である。シュワルツコップも美しい声の名ソプラノであったが、アーメリングの声は、透明で純粋な美しさの点では、シュワルツコップのさらに上を行くのではなかろうか。ヴィブラートをあまりかけない歌い方なので、このことが倍化してリスナーには聴こえるのである。シューベルトのリートは、何処かに翳りがあるが、アーメリングがシューベルトを歌うとそんな翳りは引っ込んでしまい、シューベルの純粋なキラキラと輝く宝石のような美しさだけが顔を覗かせる。こんなソプラノは、現在に至るまで一人も聴いたことがないし、果たしてエリー・アーメリングに比肩しうるソプラノがこれから出て来るかどうかである。アーメリングの歌うシューベルトのリートを聴いている時だけは、一瞬この世のわずらわしいことを忘れ、暫し天国的な雰囲気の中に迷い込む思いがする。エリー・アーメリングは、1933年オランダのアムステルダムに生まれている。1996年に引退した後も来日して、若い歌手達へ公開講座を開くなどの活動を続けていた。このLPレコードは、30代後半という歌手として最も脂の乗り切った頃の録音であり、実に生き生きしたリリックソプラノの声の美しさに加え、円熟期を迎えた卓越した歌唱技術が一段と冴えわたって聴こえる。このエリー・アーメリングの歌声を聴いていると、一時、古き良き時代へとタイムスリップしたかのような感覚にもとらわれる。エリー・アーメリングは、主にリート歌手としての演奏活動を続けたが、このことはヨーロッパの歌手としては珍しい存在であったであろう。ドイツ・リートがレパートリーの中心にあったが、古楽や宗教曲のほかフランスの歌曲やガーシュウィンなどの英語の歌曲も歌った。さらには山田耕筰や中田喜直などの日本人がつくった歌曲を日本語で歌うなど、そのレパートリーの広さは歌曲専門の歌手として面目躍如たるものがある。このLPレコードでピアノ伴奏しているダルトン・ボールドウィン(1931年―2019年)との息もぴたりと合っている。ダルトン・ボールドウィンは、ジェラール・スゼーなどのピアノ伴奏を担当し、その名脇役ぶりは当時一目置かれた存在であった。このLPレコードでもダルトン・ボールドウィンのピアノ伴奏によって、エリー・アーメリングの歌声の美しさが一層際立ったものに仕上がっている。(LPC)


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