★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇デムスとスコダのモーツァルト:4手のためのピアノソナタヘ長調K.497/ハ長調K.521

2023-04-13 09:40:01 | 器楽曲(ピアノ)


モーツァルト:4手のためのピアノソナタヘ長調K.497
         4手のためのピアノソナタハ長調K.521

ピアノ(連弾):イェルク・デムス
        パウル・バドゥラ=スコダ

発売:1979年

LP:日本フォノグラム(amadeo)13PC-225(AVRS 6463)

 これは、モーツァルトの4手(連弾)のためのピアノソナタを4枚のLPレコードに収録した「モーツァルトの4手のためのピアノ作品全集」の中の第2集である。“4手のための”とあると連弾(1台のピアノを2人で演奏する)のほかに2台のピアノを2人で演奏する曲も含まれるが、ここでは、フリードリッヒ・グルダ(1930年―2000年)を含めて当時の日本で“ウィーンの三羽烏”と呼ばれていたイェルク・デムス(1928年—2019年)とパウル・バドゥラ=スコダ(1927年―2019年)の2人の名手が連弾の演奏をしている。連弾曲と聞くと、親しい2人が弾いて楽しむ曲といった趣が強いわけであるが、ここに収められた2曲は、それに留まらず、リスナーが聴いても十分楽しめる内容のある作品となっている。ヘ長調 K.497は、モーツァルトが30歳の時にウィーンで作曲、1786年8月1日に完成した。このLPレコードのライナーノートで栗山 和氏は「対位法様式が、まったく有機的に、和声や朗唱の効果と合致している。・・・音楽学はまさしくこのソナタをモーツァルトの最後の3つの交響曲の傑作のための理想的な前段階として認めている」と記している。一方、 ハ長調 K.521は、モーツァルトが31歳の時にウィーンで作曲、1787年5月に完成した。モーツァルトの親友ゴットフリートとピアノの弟子で美貌の才媛として知られたフランツィスカのジャカン兄妹に捧げられた。1787年5月28日の早朝にモーツァルトの父レオポルトが亡くなっているが、父の死を知らないモーツァルトはその翌日にこの曲を完成させたという。「このソナタほど、わずらわしさがなく、生命の喜びに満ちた作曲は見出し得ないだろう」と栗山 和氏も書いている通り、モーツァルトの伸び伸びとした明るさが全曲にわたって光り輝いているピアノソナタなのである。イェルク・デムスはオーストリア出身。11歳の時にウィーン音楽アカデミーに入学。1956年「ブゾーニ国際コンクール」で優勝、一躍脚光を浴びる。バッハ、モーツァルト、シューマンなどドイツ人作曲家を主なレパートリーとしていた。また室内楽や歌手の伴奏者も数多く務めた。パウル・バドゥラ=スコダもオーストリア出身。ウィーン音楽院に学び、1947年「オーストリア音楽コンクール」で優勝。ウィーン古典派、とりわけモーツァルト、ベートーヴェン、シューベルトを得意としていた。このLPレコードでの二人によるピアノ連弾は、息がぴたりと合い、一部の隙もなくモーツァルトの優美な世界を見事に描き切っている。(LPC)


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