★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団のシューベルト:弦楽五重奏曲

2023-08-17 09:48:50 | 室内楽曲


シューベルト:弦楽五重奏曲

演奏:ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団+第2チェロ:ギュンター・ワイス
      
      第1ヴァイオリン:アントン・カンパー
      第2ヴァイオリン:カール・ティッツェ
      ヴィオラ:エーリッヒ・ヴァイス
      第1チェロ:フランツ・クヴァルダ
      第2チェロ:ギュンター・ワイス

発売:1962年

LP:キングレコード(ウエストミンスター) MH 5123

 シューベルトは、31歳の若さで世を去ったが、その2カ月前に作曲されたのがこの弦楽五重奏曲である。通常、弦楽五重奏曲というと、弦楽四重奏に第2ヴィオラを加えた構成をとるわけだが、このシューベルトの弦楽五重奏曲は、それとは異なり、ヴァイオリン2、ヴィオラ1、チェロ2という構成となっている。これは、チェロを加えることによって、全体のバランスを整えると同時に、低音域の充実を図ろうとしたことに他ならない。このころ既にシューベルトの作品には、死の影が忍び寄ってきており、この弦楽五重奏曲も低音を充実させることによって、重苦しい雰囲気を醸し出し、これによって当時のシューベルトの感情をこの曲に反映させることに見事に成功させているのである。このLPレコードの演奏には、51分50秒を要していることからも分るとおり、室内楽としては非常に長い曲であり、あたかも交響曲のような雄大さを秘めている。全体は4楽章に分かれており、全体は流れるようなメロディーに彩られ、如何にも歌曲の王シューベルトの晩年を飾るに相応しい作品となっている。第1楽章は、重く、同時に流れるような回顧的曲想が印象的であるが、時には激情がほとばしる。第2楽章は、アダージョの神秘的なとでも言った方がいいような幻想的な楽章である。この楽章が広く知られることによって、弦楽五重奏曲自体の評価が一層高まったようである。第3楽章は、スケルツォの楽章で、活発で浮きうきする様な曲想が、曲全体にメリハリ利かす結果に繋がっている。第4楽章は、表面的には颯爽と進むが、よく聴いてみると、何か物憂げで、死の恐怖に慄いているようにも聴こえる。このLPレコードで演奏しているのは、ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団+第2チェロのギュンター・ワイス。ウィーン・コンツェルトハウス弦楽四重奏団は、1934年当時ウィーン交響楽団のメンバーだったアントン・カンパー(第1ヴァイオリン)とフランツ・クヴァルダ(チェロ)を中心にカンパー=クヴァルダ四重奏団として結成され、その後、メンバー全員がウィーン・フィルハーモニー管弦楽団に移籍し、1967年カンパーの引退により解散した。ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団は、情緒的な曲を演奏させれば、当時、その右にでるカルテットは他になかったほどの実力を持っていた。ここでも、奥行きのある潤いに満ちた名演を聴かせてくれている。(LPC)

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