★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇ビーチャム指揮ロイヤル・フィルによるディーリアス:管弦楽名曲集

2023-08-07 09:52:04 | 管弦楽曲


~ディーリアス管弦楽名曲集~

ディーリアス:ブリッグの定期市~イギリス狂詩曲
       夜明け前の歌
       マルシュ・カプス
       春初めてカッコウを聞いて
       河の上の夏の夜
       そり乗り(冬の夜)
       オペラ「フェニモアとゲルダ」間奏曲

指揮:サー・トマス・ビーチャム

管弦楽:ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

LP:東芝EMI EAC‐80359

 フレデリック・ディーリアス(1862年―1934年)は、イギリス出身の作曲家である。イギリス出身と言っても、両親はドイツ人であり、イギリスの大学で2年間学んだ後は、米国に渡り、さらに1886年から1888年までライプツィヒ音楽院で学び、そして1888年以降はパリに定住し、生涯フランスで過すことになる。つまり、作曲家としての活動はイギリス以外の国で行われたわけであって、イギリスの作曲家と言い切るには少々苦しいところがある。では、何故、ディーリアスというと直ぐにイギリスの作曲家ということを思い浮かべるのであろうか。この理由は、イギリスの大指揮者ビーチャム(1879年―1961年)にありそうである。ビーチャムは、1907年にディーリアスと会い、そのときに深い感銘を受け、それ以後ビーチャムは、生涯ディーリアスの作品の擁護・紹介に務めたのである。ビーチャムは、当時欧米の楽界の重鎮としてその名を轟かしていたため、この結果として、欧米の楽界の人々にとっては、ディーリアスというとイギリスの作曲家という考えが定着したようである。このLPレコードは、ディーリアスの最大の支持者であったビーチャムがロイヤル・フィルを指揮し録音したもの。ビーチャムは、「春初めてカッコウを聞いて」を1927年、1946年、1948年の3回、「ブリッグの定期市」を1928年、1946年の2回録音しているが、このLPレコードの収められた録音は、これら2曲のビーチャム最後の録音となった。ディーリアスの音楽は、曲全体に優しさが溢れ、繊細な音づくりが特徴であり、聴くものを遥か別世界に連れって行ってくれるような雰囲気に溢れている。ビーチャムとロイヤル・フィルの演奏は、そんなディーリアスの曲の特徴を、最大限表現してくれている。「ブリッグの定期市~イギリス狂詩曲」は、グレンジャーがイングランド東部の寒村で採譜した民謡をもとに書き上げた作品。「夜明け前の歌」は、スウィンバーンの詩に感興を得て作曲。「マルシュ・カプス」は、「そり乗り」と共に「管弦楽のための2つの小品」を構成。「春初めてカッコウを聞いて」は、春の訪れの感情を美しい交響詩仕上げた作品。「河の上の夏の夜」は、平和と静寂の雰囲気を醸し出す美しい曲。「そり乗り(冬の夜)」は、冬の夜のそり乗りのスリルと愉しさが直に伝わってくる佳曲。「オペラ『フェニモアとゲルダ』間奏曲」は、ヤコプセンの小説「ニイリス・リーネ」にもとずくオペラの第7場へ導く音楽。(LPC)

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