★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇エド・デ・ワールト指揮ドレスデン国立管弦楽団のモーツァルト:行進曲K.237/セレナード第4番K.203

2023-04-24 09:40:07 | 管弦楽曲


モーツァルト:行進曲K.237
       セレナード第4番K.203

指揮:エド・デ・ワールト

管弦楽:ドレスデン国立管弦楽団

ヴァイオリン:ウト・ウギ

録音:1973年11月17日~23日、ドレスデン

発売:1981年

LP:日本フォノグラム(フィリップスレコード)

 このLPレコードで指揮をしているのが、オランダ出身のエド・デ・ワールト(1941年生まれ)である。エド・デ・ワールトは、名門アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団でオーボエ奏者として活躍。1964年「ミトロプーロス指揮者コンクール」で優勝した。その後、ニューヨーク・フィルでバーンスタインの副指揮者として1年間を過ごし、1973年にはロッテルダム・フィルの首席指揮者に就任。一方、ヴァイオリンのソロの演奏しているウト・ウギ(1944年生まれ)は、イタリア出身。ジョルジュ・エネスコに師事した後、キジアーナ音楽院で学ぶ。世界各地で演奏活動を行い、1980年に初来日している。イタリアにおいては、最も著名なヴァイオリニストの一人として知られ、イタリアのヴァイオリン流派の伝統の正統継承者としてみなされている。このLPレコードでは、セレナード第4番の第2、第3、第4楽章でのヴァイオリン独奏により、この曲全体がぐっと引き締まった印象をリスナーに与える。セレナード第4番は、「コロレド・セレナード」と呼ばれることがある。コロレド大司教はモーツァルトの才能にまったく気付かず、モーツァルトを一人の召使としか評価しなかったために、二人は最後には喧嘩をしてしまう。モーツァルトは、大司教側近のアルコ伯爵に、お尻をけとばされ、戸外へ突き出されてしまったというエピソードも残っている。そんなことで職を失ったモーツァルトは、貧困の生活を余儀なくされる。1774年に作曲された全部で8つの楽章からなるこのセレナードは、そんないわく付きの曲ではあるが、セレナード枠を越えたスケールの大きさと厳粛な雰囲気を漂わせた堂々としたセレナードとして知られる。また、第2、第3、第4楽章では、独奏ヴァイオリンがヴァイオリン協奏曲のような効果を発揮している点も注目される。もし、モーツァルトの作品でまだ“隠れた傑作”があるとするなら、その筆頭に挙げられてもおかしくないような内容の充実した作品に仕上げられている。このLPレコードでは、セレナード第4番の前に行進曲が収録されているが、これは当時、セレナードやディヴェルティメントの前後に行進曲を演奏して、聴衆の入退場をスムーズに行った名残である。エド・デ・ワールトの指揮は、そんなセレナードを誠に正統的に演奏しており、ウト・ウギのヴァイオリンのソロ演奏とともに、この曲の真価を知らしめることに見事成功しているのである。(LPC)

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