シューベルト:アルペジオーネ・ソナタ
ドビュッシー:チェロソナタ
ベートーヴェン:「魔笛」の主題による7つの変奏曲
チェロ:モーリス・ジャンドロン
ピアノ:ジャン・フランセ
録音:1966年11月
発売:1975年
LP:日本フォノグラム(フィリップスレコード) PC‐1565
モーリス・ジャンドロン(1920年―1990年)は、フランス、ニース出身の名チェリスト兼指揮者。ニース音楽院で学んだ後、パリ音楽院でパブロ・カザルスの薫陶も受けた。1940年代半ばからは、シェルヘンやメンゲルベルクらから指揮法を教わっている。第二次世界大戦後の1947年にプロコフィエフのチェロ協奏曲のヨーロッパ初演を行い、名声を高めた。モーリス・ジャンドロンは、教育にも熱心で、1954年からザールブリュッケン音楽大学のチェロ科教授となり、1970年からはパリ音楽院のチェロ科主任教授に就任している。1960年にチェリストとして来日した後、1972年に指揮者として来日し、東京都交響楽団を指揮した。その後も1980年代には草津夏季国際音楽アカデミー&フェスティヴァルでは、チェロや室内楽、オーケストラの指導にも当った。このLPレコードでのモーリス・ジャンドンのチェロの演奏は、知的で抑制力があり、実にキメ細かく、そして美しい音色を存分に披露しており、聴いていて楽しめる。特にLPレコード特有の音質感とモーリス・ジャンドロンのチェロの音色が誠にうまくマッチし、LPレコードの存在感を一層際立たせる録音になっている。アルペジオーネ・ソナタは、シューベルト27歳の1824年に作曲された曲。アルペジオーネとは、この前年に発明され、その後10年ほどですたれたチェロに似た楽器。この曲をチェロで演奏するには高度な技巧がいるが、シューベルト独特の歌い心がたっぷりと味わえるためか、現在でもよく演奏される人気の曲となっている。シューベルトがエスターハージー家の音楽教師として、ハンガリーの田舎で夏を過ごした時の作品だけに、ハンガリーの民謡音楽をの影響を受け、エキゾティックな魅力を湛えている。シューベルト特有の透明感のあるこの曲を、モーリス・ジャンドロンは、軽快に颯爽と弾きこなす。ドビュッシー:チェロソナタは、ドビュッシーの死の3年前53歳の時の作品。印象派であった頃の作風とは異なり、古典的な作風の曲。モーリス・ジャンドロンは、この曲を手堅く、たっぷりと弾き込み聴き応えがある。ベートーヴェン:「魔笛」の主題による7つの変奏曲は、ベートーヴェン30歳頃の作品で、比較的演奏効果が発揮できる曲で、モーリス・ジャンドロンは、軽快にメリハリよく弾きこなし、鮮やかである。(LPC)