★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇ダニエル・バレンボイム指揮&ピアノのモーツァルト:ピアノ協奏曲第21番/第19番

2021-07-19 09:54:48 | 協奏曲(ピアノ)


モーツァルト:ピアノ協奏曲第21番/第19番

指揮&ピアノ:ダニエル・バレンボイム

管弦楽:イギリス室内管弦楽団

録音:1968年10月1日~2日、アビー・ロード・スタジオ(第21番)
   1972年4月23日、1973年3月24日、アビー・ロード・スタジオ(第19番)

LP:東芝EMI EAC‐85007

 このLPレコードは、指揮&ピアノ:ダニエル・バレンボイム、管弦楽:イギリス室内管弦楽団によるモーツァルト:ピアノ協奏曲全集の中の第21番/第19番を収めた一枚だ。バレンボイム(1942年生まれ)は、アルゼンチン出身のピアニスト・指揮者で、現在の国籍はイスラエル。ピアニストとしての名声を確固たるものとした後、1966年からイギリス室内管弦楽団とモーツァルトの交響曲録音を開始し、指揮者デビューを果たす。パリ管弦楽団音楽監督、シカゴ交響楽団音楽監督、ミラノ・スカラ座音楽監督を歴任。1992年からはベルリン国立歌劇場音楽総監督を務めている。モーツァルトは、1785年に第21番を含む3曲のピアノ協奏曲を作曲している。その前の年の1784年に6曲、後の年の1786年に3曲のピアノ協奏曲を書いており、この頃、集中的にピアノ協奏曲に取り組んだことが分かる。第20番のピアノ協奏曲が短調で書かれたのに対し、第21番はハ長調の明るく輝かしい趣を持った曲に仕上がっている。初演は、1785年3月12日にウィーンでモーツァルト自身のピアノ独奏で行われ、好評を得たことが姉ナンネルへの手紙に書かれている。モーツァルトのピアノ協奏曲は、この時期以降飛躍的に進展を見せ、ピアノとオーケストラが対等の立場に立ち、そのオーケストラは管楽器を活用することで、色彩感が色濃く付けられ、緩徐楽章の美しさが際立つようになっていく。その典型的な一つがピアノ協奏曲第21番。その第2楽章はスウェーデン映画「みじかくも美しく燃え」に使われた。ここでのバレンボイムのピアノ演奏は、曲に真正面から取り組み、その悠揚迫らざる演奏態度は、当代一のモーツァルト弾きであることを強く印象付ける。ゆっくりとしたテンポをとり、一音一音をかみしめるようにして弾き進む。華やかさに加え、堂々とした構えのある演奏内容となっている。この演奏を聴くと、第21番のピアノ協奏曲のすべてが語り尽くされたかのような印象すら受け、他のピアニストの演奏が、何かむなしいもの聴こえるほどの名演を聴かせる。一方、このLPレコードのB面に収められたピアノ協奏曲第19番は、1784年に書いた6曲のピアノ協奏曲の中の一曲。第20番以降の充実した内容のピアノ協奏曲に比べて、少々物足りない気もする曲だが、それ以前のピアノ協奏曲と比べると、大きな成長を見せている。ここでのバレンボイムは、第21番とはがらりと様相を変え、軽快そのものの演奏に徹しており、理屈抜きにモーツァルトを楽しむことができる演奏内容に仕上がっている。(LPC)

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