★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇サンソン・フランソワのショパン:バラード/スケルツォ全曲

2021-07-22 09:40:06 | 器楽曲(ピアノ)


ショパン:バラード 第1番~第4番
     スケルツォ 第1番~第4番

ピアノ:サンソン・フランソワ

LP:東芝EMI EAC‐70031

 これは、往年の名ピアニストのサンソン・フランソワ(1924年―1970年)が、ショパン:バラード第1番~第4番とスケルツォ第1番~第4番を1枚に収めたLPレコード。その閃きと核心をついた演奏内容は、これを凌駕する録音は、現在に至るまでないと言ってもいいくらい高い芸術性を備えた演奏に仕上がっている。ショパンのバラードは、全部で4曲あるが、それらは、21歳~31歳、ショパンの創作の絶頂期につくられている。第1番はポーランドの詩人ミッキェヴィッツの詩「コンラド・ワーレンロッド」をもとに、1831年~35年に書かれたもの。フランソワの演奏は、予想に反して曲に忠実に端正に弾き進む。こじんまりとした印象を与える演奏だが、逆にその分詩情豊かな演奏内容がリスナーの心に沁みわたる。第2番は、ミッキェヴィッツの詩「ウィリス湖」をもとに、1836年~39年につくられた。フランソワの演奏は、静寂さと劇的な動きが交差するような演奏内容で圧倒される。フランソワ特有の閃きに満ちた演奏だ。第3番は、ミッキェヴィッツの詩「ウィリス湖」をもとに、1840年~41年に書かれた。この曲の華麗な曲想に、フランソワの持ち味である幻想的な雰囲気がよくとけ合い、最大限の演奏効果を挙げることに成功している。第4番は、1842年に書かれた。ここでのフランソワの演奏は、持てる力を総動員しての力強い演奏内容。深く沈み込むような表現が巧みに生かされ、スケール大きい表現も印象的。一方、スケルツォもショパンは4曲遺した。第1番は、1831年~32年に書かれた。フランソワの演奏は、水を得た魚のように、生き生きと輝くような演奏を繰り広げる。この曲の持つ、渦巻くようなエネルギーの表現はフランソワが最も得意としていたもの。第2番は、4つのスケルツォで一番有名な曲で、1837年に書かれた。フランソワの演奏は、第1番以上に曲の核心をずばりとつく名演を披露する。一遍の演劇が目の前で演じられるようなリアルな演奏内容だ。第3番は、1839に書かれた。曲の内容は、たぎるような情熱をたたえ、表情の陰影が濃く、ショパンのスケルツォの中では、一番音楽的に充実しているという評価を得ている。フランソワは、ここでも独特の個性を発揮しており、深みに落ちていくような、スリリングな表現がリスナーの耳を奪う。第4番は、1842年の作。ここでのフランソワの演奏は、この曲の曲想に合わせ、他の3曲には見られない伸び伸びとした演奏内容となっている。そうはいってもフランソワ、陰影を付けた演奏内容は、他のピアニストの比ではない。(LPC)

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