★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇ギーゼキングのモーツァルト:ピアノ協奏曲第20番/第24番

2020-05-07 09:36:54 | 協奏曲(ピアノ)

モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番/第24番

ピアノ:ワルター・ギーゼキング

指揮:ハンス・ロスバウト(第20番)/ヘルベルト・フォン・カラヤン(第24番)

管弦楽:フィルハーモニア管弦楽団

LP:東芝音楽工業 AB‐8064
 
 ワルター・ギーゼキング(1895年―1956年)は、ドイツの名ピアニスト。全盛時代は、楽譜に忠実に演奏する“新即物主義”のピアニストとして名声を博した。今、ギーゼキングのLPレコードを聴くと、特別な弾き方だとは感じられないが、当時は、ロマン派の名残であろうか、ピアニストの興の赴くまま、恣意的な演奏が普通であったようで、楽譜に忠実に演奏する“新即物主義”のピアニストは、珍しい存在であったのだ。しかし、ギーゼキングが“新即物主義”のピアニストだからといって、技巧一辺倒の機械的な演奏家かというと、実はその真逆で、微妙に揺れ動くピアノタッチによって、ロマンの香りが濃く立ち込める演奏を我々に披露する。その証拠がこのLPレコードには隠されている。モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番/第24番の共に第2楽章を聴いてみると一目瞭然。こんなにモーツァルトの作品から、馥郁とした優雅さ、そして、さり気ない憂愁の美を引き出せるピアニストは、今に至るまで果たしてギーゼキング以外にいるのかとすら思ってしまうほどの名演だ。2曲とも、その他の楽章は、ギーゼキングの卓越した技巧で、軽快なテンポの中に、実にすっきりとした造形美を持った曲として聴くことができる。その結果、聴き終えた印象は、第2楽章とその前後の楽章の対比が実に鮮やかな対比を見せ、モーツァルトのピアノ協奏曲の演奏にありがちな、平板さは、ギーゼキングの演奏には少しもない。このLPレコードのライナーノートに大井 健氏がギーゼキングの演奏を、次のように書いているので紹介しよう。「テクニックを磨くものは、“頭脳”であると言い切ったギーゼキングは、どんな至難なテクニックでも、純粋な音楽に、知性的に変化させ、完全なものに高めてしまう。モーツァルトに聴かれる美しいレガート、弱音の見事な美しさ、これらは、ギーゼキングの非凡な技巧のたまものであるが、『キーをたたけばピアノは歌わない』と言って、彼は指がキーにふれた瞬間、キーを押えて指を離す、という至難なテクニックを自ら切り開いて行った。ギーゼキングのモーツァルトに対する確かなリズム、優雅さは、モーツァルトの美を支えて、永遠に残る名演である」。指揮のハンス・ロスバウト(1895年―1962年)はオーストリア出身。1929年に新設のフランクフルト放送交響楽団の音楽監督に就任し、シェーンベルクやバルトーク、ストラヴィンスキー、ヒンデミットなど現代音楽作品の指揮で有名であった。第二次関大戦後は、 ミュンヘン・フィルやチューリッヒ・トーンハレ管弦楽団の指揮者として活躍した。(LPC)

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