「戦争」法か「平和支援」法か? |
2015/4/21
報道によると、社民党の福島瑞穂副党首が、1日、参議院予算委員会で質問した際に、政府が提案をめざしている安全保障関連法を「戦争法案」と呼んだ。それに対して、安倍晋三首相は「レッテルを貼って、議論を矮小(わいしょう)化していくことは断じて甘受できない」と応じたとのことである。
この質疑を受けて、岸宏一委員長(自民)は「不適切と認められるような言辞があったように思われる」と述べ、その後、自民の堀井巌理事が、福島議員に「戦争法案」という表現を「戦争関連法案」などと修正することを求め、拒否されたとのことである。 まず、全ての大前提として、「言葉」は、それを聞いた者がその意味するところ(対象)を即座に正確に思い起こすことができるものでなければならない。 今回、国会に提出されることが予定されている一群の法案は、これまでは憲法の故に不可能だとされてきた「海外派兵」(海外で国際法上の『戦争』に参加すること)を可能にする法案である。だから、その本質は、これまで(戦後70年間)一度も「戦争」をしたことがないわが国が、これからは「戦争」をすることができるようになるための手続き諸法である。 それを政府は、「重要影響事態安全確保法」「国際平和支援法」などと呼称している。これらの名称だけを見て、即座にその内容を認識できる日本人がいるとは思われない。前者などは日本語として、一見して意味不明であり、後者は、PKOなどの戦後復興支援をイメージさせてくれる。しかし、実際は、前者は集団的自衛権の行使つまり同盟国を守るために海外の戦場に派兵参戦する手続き法であり、後者は、現に戦争遂行中の他国軍を、現場に行って後方支援する戦争支援法である。 そう考えてくると、むしろ、政府自民党の方が変な「レッテルを貼って」事実を「矮小化して」その場を通過しようとしているように見える。 それに対して、福島議員は、むしろ、これまでわが国には存在せず、今後は、わが国の存続と私たち国民の生命、自由、財産、名誉にかかわる戦争ができる国に変貌する「戦争法」の提案が行われている…という、重大な事柄の本質を端的に主権者国民に知らせてくれる、正当な「レッテル剥がし」をしているだけではないか。それこそ、主権者国民の代表たる議員としての正当業務であろう。 (慶大名誉教授・弁護士) |